パッシブデザインと昔から続く日本の住宅建築の共通点
現代の生活において、日常に必要不可欠な暖かさ、涼しさ、明るさは、電気やガスによって支えられています。その結果、一般的な家庭でのエネルギー消費量は増加し続けてきました一方、昔の日本の住宅は、電気やガスに頼らず、深い軒や窓、小屋裏などを活用して、夏の涼しさ、陽射しによる明るさを採り入れてきました。
現代は、窓の少ない家、軒のない家も増えていますが、日本の昔の住宅には、深い軒やたくさんの窓、また現在でも人気の高い吹き抜けを備えていました。家の中の環境を調える方法の一つとして、自然の恵みである太陽光や風といったエネルギーを活用していたのです。パッシブデザインとは、昔からの日本の住宅とたくさんの共通点を持つ設計の手法ですが、異なる点もあります。パッシブデザインの具体的な特徴を確認していきましょう。
陽射しを採り入れる
室内に陽射しを採り入れることには、2つの意味があります。ひとつは暖かさです。太陽熱によって、冬は室内を暖め室温を上昇させる、壁や床に温かさを蓄えさせるという効果が得られます。その結果、ガスや電気などのエネルギーの消費量が抑えられ、住宅での省エネに貢献します。
もう一つは明るさです。太陽光によって晴れた日の昼間には、照明をつけなくても、滞りなく生活ができます。太陽熱も太陽光も、敷地周辺の環境、地域や窓の向く方向による日照時間の違いなどを考えあわせた上で、窓の位置や吹き抜けなどを設計デザインします。その結果、太陽の熱と光効を率よく採り込み、暖かく明るい家を生み出されます。
風を採り入れる
窓からの風は家の中の空気を入れ替えて室内の空気をきれいにするとともに、室内の熱を外に排出して家の中を涼しくします。気密性が高まると共に十分な換気計画が求められる為、機械換気は行われますが、窓からの風には暮らしの質を向上させる心地良さもあります。
吹き抜けや地域の風の性質にあった窓の位置は、自然の風を採りこみ、家の中を循環させるためにも役立ちます。昔の日本の家は、現在の住宅よりずっと窓が多く、空気が循環する涼しい環境を創り出す間取りでした。
日射を遮蔽する
冬の陽射しは家の中に温かさを届けてくれますが、夏の陽射しは室内の温度を上昇させます。夏の室温上昇を抑える為には、日射遮蔽が必要です。日本に家に昔から備えられてきた深い軒や窓のそばの落葉樹などは、日射遮蔽に有効です。軒の深さは、窓の位置と同じように、季節ごとに変わる太陽の位置による日照時間の違いから割り出した深さの軒が夏の日射を遮蔽します。
熱の出入りを抑える
いわゆる断熱性の高さです。断熱は夏の暑さを家の中に侵入させない、冬の室内の暖かさを逃がさないという役割を果たす性能です。従来の日本の住宅との違いは、断熱性のうち、冬の室内の暖かさを逃がさないという部分です。
パッシブデザインにおいては、屋根、壁、床、窓や玄関や勝手口のドアなどの開口部からの熱の出入りを抑えることが重要なポイントの一つです。熱の出入りを抑えることによって、空気が循環するパッシブデザインの設計が活かされます。
参考資料 パッシブデザインの理論構築とその普及のための建築教育活動
■ 吹き抜けのある家はすべて寒いのか?と言えば、そんなことはありません。冬でも暖かく過ごせる吹き抜けのある家は数多く存在します。吹き抜けのある寒い家と、吹き抜けのある暖かい家の違いが分かれば、吹き抜けがあると寒い家になる理由がわかります。
コラム 吹き抜けが寒い家・後悔する家にさせない新築時の寒さ対策
パッシブデザインのメリットデメリット
自然のエネルギーを活用することによって、ガスや電気の消費量が抑えられ、省エネ生活ができることです。消費エネルギーを抑える為に、暑さ寒さを我慢しなくてはならない家は、快適な生活ができる居心地の良い家とは言えません。最小限のエネルギーで明るく、夏涼しく冬暖かい環境を創れるということがパッシブデザインのメリットです。
さらに家の中を空気が循環するように設計されているので、家の中に温度差が生じにくいです。家の中の温度差は家族の健康に悪影響を及ぼしますが、パッシブデザインの家では、部屋毎の環境差(温度差・快適さなど)が少ない家がつくられます。
一方、パッシブデザインにはデメリットもあります。季節による気候の変化、太陽の位置、地域の風の性質、周辺の環境など、家を取り巻くあらゆることに対して、正確に分析をし、その分析に基づいた優れた設計をし、その設計を実現する熟練した施工力が求められるからです。
この3つの要因の内、一つでもかけていれば、パッシブデザインの家は実現しません。陽射しを通り入れる為の窓の位置が周辺の環境に配慮されていなければ、光と熱は採り入れられたが、プライバシーが守れない窓や、心地よいとは言えない景観を採り入れる窓になってしまうかもしれません。
地域の風にあった窓でなければ、せっかく空気を循環させる間取りになっていても、風が採り込めないかもしれません。そのことから、パッシブデザインの家での家づくりをする場合には、この3つの要因を満たす施工先を探しことが出すことが非常に大切です。
また、断熱性を高める為に高性能の建材を使用する為、建築費が嵩むこと、自然エネルギーを採り入れる為の間取りの自由度に制限が出ることもパッシブデザインのデメリットです。予算のバランスと家族の希望の間取りとの兼ね合いを考えながら、計画を進めていくことが大切です。
■ 新築住宅の間取りプランを作成する際、窓の位置はとても重要です。窓の種類や寸法、窓を配置する高さによって、家の中の環境が大きく変わるからです。窓の種類や位置は、外観のデザイン性にも影響を与えます。暮らしやすく快適な環境の家、デザイン性の高い外観の家にする窓にする為に必要なことを考えていきましょう。
コラム 住宅の窓は種類や配置で暮らしを変える
パッシブデザインとアクティブデザインとの違い
パッシブデザインは、自然のエネルギーを活用する設計デザインですが、アクティブデザインは、設備が生み出すエネルギーを活用する設計で、一般家庭に取り入れられる要素もあります。最もポピュラーな設備は太陽光発電です。
ZEHのように、消費するエネルギーをプラスマイナス0にする住宅を実現したい場合には、パッシブデザインだけではなく、アクティブデザインを活用することも求められます。具体的には、エネルギーを創り出す太陽光発電、創り出したエネルギーを活用する給湯設備、消費エネルギーの少ない照明や冷暖房機器などが挙げられます。
これからの家づくりを考えていく時、省エネができる家であることが大切です。省エネとは我慢して消費エネルギーを抑えることではなく、快適な室温を調えても、消費エネルギーが節約できるということです。そして同時に、自然の恵みから得たエネルギーを活用する方法を家の中の環境だけではなく、給湯や蓄電にも使えることが理想です。従って理想の住環境は、パッシブデザインとアクティブデザインをバランスよく採り入れるということではないでしょうか?
■ 他の省エネ住宅との違いがよくわからない、そもそも省エネ住宅にするべきなのか?といった疑問もあるのではないでしょうか?家が完成してから、zeh 住宅にしていく方法もありますが、新築時に計画できるなら、より良いzeh 住宅にでき、費用も抑えられます。zeh 住宅に関する疑問を解決し、判断の参考にしていきましょう。
コラム zeh 住宅とは?zeh 住宅にすると暮らしはどうかわるの?
浜松で家族の暮らしに寄り添った自然素材の家を造る工務店
田畑工事は、「ご家族が生涯を通じて、健康・快適に暮らせる住まい」
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