完全同居型二世帯住宅には平屋が理想的
完全同居型二世帯住宅は、一軒の住宅で、三世代が大家族として暮らす二世帯住宅です。リビングやダイニングキッチン、浴室、玄関など、家族それぞれの居室以外は全てを共有します。サザエさんやちびまるこちゃんのような暮らし方です。
三世代が共に暮らす二世帯住宅の恩恵を、全て得られる二世帯住宅であることに加え、家づくり予算を最も抑えられるという良さがあります。すべてを共有するので、床面積が抑えられ、住宅設備機器や建具、間仕切壁などの量も減るからです。
その為、もし敷地に余裕があるのであれば、完全同居型二世帯住宅には平屋が向いています。平屋は、階段のない暮らしができるので、家中をバリアフリーにできるという強みがあります。バリアフリーの家は、親世代が高齢になった時への安心感があるとともに、子育て中の子世帯にとっても、子どもの安全が守りやすいという魅力があります。何より、親世帯にとっても、子世帯にとっても、家事負担が減るという良さがあります。
ただその一方、完全同居型は、トラブルが起こりやすい二世帯住宅でもあります。少人数で暮らすことに慣れている現代人にとって、三世代が同居することによって、様々なストレスを感じてしまうからです。ストレスが発生する原因には、家の中が片付かない、睡眠を妨げられるといったことが挙げられます。
家の中が片付かない
玄関、リビング、キッチン、洗面所は、一世帯だけの家族であっても、物が溢れやすい場所です。三世帯ともなれば、余計片付きにくくなってしまうのは当然のことです。親世帯が来客を予定しているのに、孫も友達をたくさん連れてきて、玄関に靴が溢れているという状況になれば、親世帯にストレスが生まれます。学校や外出から帰った家族が、何もかもリビングに置きっぱなしにしてリビングが片付かない、洗面所に洗濯物が溢れている…などは、主婦にとって頭の痛くなるような状態です。
このような問題を解決する最適な対策は、収納の造り方です。家族の生活動線に合わせたそれぞれの場所に、収納力の高い収納を設けることで、片付けやすい家にできます。玄関には広い土間収納を設けると、靴以外に、ベビーカーや、子どもの外遊びの道具も収められます。キッチンにも、土間と合わせたパントリーがあると、キッチン内がすっきりする上に、買い出しした食料品の搬入の手間が抑えられます。家族の暮らし方に合わせた家族用の大型収納を、生活動線にあった場所に設けることが大切です。
睡眠を妨げられる
平屋には、家の中の空間が繋げやすく、家族の自然なコミュニケーションが生まれるチャンスが多いという良さがあります。ただ、二世帯住宅の場合、この良さが、暮らしにくさに繋がる恐れがあります。夜遅く帰宅する家族が、早めに就寝する家族の睡眠を妨げてしまうことがあるからです。そのようなことにならないよう、間取りプラン作成時には、家族の生活の時間帯に合わせて、お互いの世帯が睡眠を妨害しない部屋の配置を考えていく必要があります。
完全分離型二世帯住宅には左右に分離する2階建てが理想的
完全分離型は、横、または縦に並んだ2軒の戸建て住宅のような二世帯住宅です。すべてをそれぞれの世帯用に設けるので、広い敷地が必要である上に、建築費も嵩みます。平屋は、総二階建てに比べて、同じ床面積を得ようとすると、およそ二倍の敷地面積が必要です。しかも、平屋の場合、同じ敷地面積であっても、周辺の環境によっては、日当たりと風通しが得られないという難しさがあります。
平屋で、完全分離型二世帯住宅を建てる場合、完全に分離する為、平屋の中央に廊下を設けるという方法、または2軒の家を中庭でつなぐ方法が考えられます。どちらの場合も、相当広い敷地がなければ、日当たりと風通しが良く、十分な居住面積が確保されている家にはなりません。
従って、完全分離型二世帯住宅には、2階建てが理想的です。2階建てであれば、同じ敷地面積であっても、十分な床面積が確保できます。2階建ての二世帯住宅には、上下に分離する方法と左右に分離する方法があります。ただ、上下に分離する方法には、いくつかの問題点があります。
下の階を使う家族にとって上の階の足音が煩わしい
子育て中の子世帯が上の階を使い、親世帯が下の階を使う場合、子どもの足音で睡眠を妨げられたり、来客中に煩わしく感じられたりします。親世帯が在宅で仕事をしている場合には、仕事に集中できないという弊害が起こる恐れもあります。
玄関の設け方が難しい
2階にも玄関を設ける場合には、外階段が必要です。外階段は、吹き降りの雨や雪の時には、滑ってしまう危険性があります。一方、1階に2つの玄関を並べて造ると、1階の床面積が減ってしまいます。
資産価値が低くなる
何かの事情で売却することになった場合、上下に分離している二世帯住宅より、左右に分離している二世帯住宅の方が良い条件で取引を進められる傾向があります。また、半分を賃貸として活用したい場合にも、左右分離の方が、居住希望者が見つけやすく、家族にとっても生活上のストレスが抑えられます。
部分共有型二世帯住宅は共有部分の面積と敷地の面積に合わせて考える
部分共有型は、3つのタイプの中で、最も融通の利くタイプとも言えます。共有する部分が少なければ、平屋にすることもでき、敷地面積の制限内で共有部分を増やしたいという場合には、二階建てにするという選択肢があります。
共有する部分を減らせば、敷地面積も建築費も抑えられ、共有する部分が増えれば、敷地面積も建築費も嵩みます。例えば、玄関だけ共有するというような二世帯住宅であれば、ほとんど完全分離型に近い敷地面積と建築費が必要です。ただ、共有する部分が少なかったとしても、完全同居より、二世帯住宅で発生する恐れのあるストレスを減らせます。
二世帯住宅は、家族の愛情を育む暖かい住宅です。家族構成と家族の暮らし方、世代ごとの考え方や価値観を十分に配慮した上で、敷地面積、家づくり予算に合わせた計画を進めましょう。