和室はいらない?一軒家の新築ならリビング横の小上がりにする?
マンションや建売住宅には、和室のない間取りが増えてきています。注文住宅の間取りプランに際しては、和室はいらないのか、あった方が良いのかと迷われるご家族もいらっしゃるのではないでしょうか?
リビング横に小上がりを設けて和室の代わりにする、子育て中や階段が使えない状況の時に、1階の寝室として使うなど、和室と間取りの関係や、和室の使い方、和室の良さについて考えていきましょう。
和室は暮らしに合わせて融通の利く部屋
和室の良さの一つは、その時々の目的に合わせて使える部屋であるということです。昔の住宅や、現在でも部屋数に余裕のある住宅では、和室のうちの一室を客間としてだけ使うこともあります。来客がない日は使わない余所行きの部屋です。
お客様の際には、床の間に季節やお客様に合わせた掛け軸をかけ花を飾る、雪の季節には雪見障子から雪景色を楽しむというような接待用の部屋です。昔の住宅には、その他にも家族で団欒したり、子どもにお昼寝をさせたりできる日常生活で使うお茶の間と呼ばれる和室がありました。
ただ、現代の生活では、客間としてだけ使う和室は贅沢な部屋になってしまいました。それでは現代の戸建て住宅では和室はどのように使われているのでしょうか?
現代の生活での和室の使われ方
現代の家では多くの場合、和室は様々な用途に使える便利な部屋として使われています。具体的な使われ方を見て行きましょう。
リビングの延長としても客間としても使える和室
近年は、家にいる時間は家族揃ってリビングで過ごす、というライフスタイルのご家族が増えています。その為、リビング中心の間取りは人気が高く、できるだけ広々としたリビングにしたいというご家族がほとんどです。その結果、昔は多くの家に合った客間を設けず、広いリビングにするという間取りが増えています。加えて、リビングとダイニングキッチンを区切らず、LDKとして並べる間取りが主流です。
この間取りには、調理中でもキッチンにいる家族とリビングにいる家族がコミュニケーションをとりやすい、配膳や調理のお手伝いをしやすい、床面積に無駄がないという良さがあります。ただ、その一方、来客の際にはリビングでお客様をもてなすため、ダイニングキッチンへの視線が気になる状況になりやすいという難点があります。
このような状況を解決できる間取りがリビング横の和室です。普段は引き戸を開放してリビングの延長として、ゴロンと横になったり、子どもと遊んだりする部屋として使い、来客の際には引き戸を閉じて客間として使うという間取りです。引き戸を閉じて個室にできる和室以外には、小上がりを和室として使うという間取りもあります。小上がりに個室感を出す為や、リビングからの視線を遮る為に、垂れ壁を設けることもあります。
また、泊り客があった場合には、和室に泊まってもらえます。泊り客は稀なので、リビングにベッドにもなるソファを置くという考え方もありますが、和室なら泊り客の人数に融通が利きます。リビングの床が無垢材のフローリングなら布団を敷くこともできますが、複合フローリングの場合、結露が発生してしまうことがあります。
子育てに役立つ和室
誕生した時から個室を与える欧米の国とは違い、日本では就学するまでの期間、両親と一緒に寝るという子どもは少なくありません。子ども部屋はいつから与えるかというご家庭の教育方針にもよりますが、和室にはそれまでの期間、夜間は親子が川の字で就寝するという使い方もあります。
また、子どもが小さいうちは、遊んでいる途中で急に眠ってしまったりすることがあります。そのような時にリビングやダイニングキッチンから目が届く場所に和室があると、2階の子ども部屋まで抱いて行かなくても、お昼寝させるスペースを確保できます。
そして、和室の床は畳なので柔らかく、ヨチヨチ歩きの子どもが転んでしまっても深刻な怪我に繋がりにくいという良さがあります。昔と違いイ草だけで作られた畳だけではありませんが、自然素材の畳を選べば、有害物質を含んでいない安心感があります。
家事をする部屋として使える和室
和室は、取り込んだ洗濯物をたたんだり、繕い物をしたりする際には、家事室としても使えます。広いパントリーやランドリールームを設け、その一部を家事室として使うという間取りもありますが、和室には子育て中に、子どもを見守りながら家事ができる便利さがあります。
お仏壇を置ける和室
近年は本来の仏壇ではなく、洋室に調和しやすいミニ仏壇と呼ばれる扉のない仏壇もあるようですが、本来の仏壇には扉があります。この扉には仏様と人間界の境界という意味があります。扉の開閉のタイミングに規則はありませんが、朝、お線香をあげる際には扉を開け、夕方お線香をあげた後には閉じ、ご先祖様に休んでいただくというご家庭が多いと思います。
お仏壇の大きさにもよりますが、扉のある本来のお仏壇をリビングに置くと違和感があるという場合、和室があるとお仏壇の居場所が確保できます。
2階の寝室が使えなくなった時に寝室として使える
高齢になって車椅子生活になってしまった場合、2階の寝室は使えなくなってしまいます。また、若いうちでも、怪我をして数週間は階段の昇り降りができないというような状況になることもあるかもしれません。妊娠中も、時期によっては階段が危険になることがあります。そのような時には、1階の和室を寝室として使えます。
■ 和風住宅とは、古くからの日本家屋の良さを活かし、昔のままの日本家屋が持つ「現代の生活にはそぐわない面」を、現代のライフスタイルに合わせて造りあげる、現代の生活に必要な機能を備えた暮らしやすい住宅です。
和室を設けるか設けないかを決める為の考え方
せっかく和室を設けても、家族の暮らし方に調和しない和室であれば、和室はいらないという結果になってしまいます。また、暮らしやすい家にする為に、床面積の配分は非常に重要です。
和室に当てた床面積で、もっとリビングを広くすれば良かった、書斎を作れば良かったということにならず、和室があって良かったという結果にする為には、どのように和室の計画を進めていけばよいのでしょうか?
家族の暮らしの中での和室の必要性を考える
和室は休日や食後の寛ぎスペースとしてどうしても欲しい、子育て中の様々なシチュエーションを思い描くと和室は便利、両親が泊まりに来た時に和室がないと泊まってもらう部屋がない、客間を設けるとリビングが狭くなるのでリビングの続き間として和室を造りたい…など、新しい家での暮らしを具体的に思い浮かべた上で、和室にどの程度の必要性があるのか考えてみましょう。
来客も泊り客もほとんどない、ソファの方が畳より楽で寛げる、子どもが中学生以上になっている、家事ができるランドリースペースの方が使いやすそう、仏壇はない、平屋なので2階に上がれなくなる心配はないというような場合には、和室を設けるより、リビングをより広くする、ランドリースペースやパントリーをユーティリテイとしても使えるよう広くするという間取りの方が向いているかもしれません。
■ 和室に使われる自然素材には、室内環境を良くする効果があります。
和室のお手入れについて確認しておく
和室には時期が来ると交換しなくてはならない素材が多くあります。その為定期的なお手入れが必要です。
畳
フローリングは半永久的に張替えの必要がありませんが、畳には表替えや裏替えが必要です。和室の使用頻度や日当たり具合や湿度などの室内環境によって変わりますが、新築時から2~5年後には裏返しという畳表を裏返すお手入れをしなくてはなりません。さらに5~7年後には、新しい畳表と畳縁に張替えをする表替えをします。
畳の寿命は畳の質によって多少の差はありますが、10~15年程度ですので、10~15年に1回は新品の畳への交換も必等です。お手入れは大変ですが、畳はお手入れや交換をすると新築時のような爽やかなイ草の香りが部屋いっぱいに広がり、より寛げる空間が生まれます。
襖と障子
襖と障子は毎年お正月前には、張り替えるというご家庭もありますが、そこまで頻繁にしなくても美観と清潔を保つことができます。
ただ、無垢材の建具であれば、半永久的に使えますが、襖には張替えの必要があります。室内の環境によって差はありますが、10年程度が張り替え時期の目安です。
障子は襖よりも破れたり汚れたりしやすく、紫外線による退色も目立つので、3~4年に一度は張替えが必要です。
また、障子も襖も猫が爪とぎをしてしまった、こどもが遊んでいて突進してしまったというようなことがあれば、時期が来なくても張替えをしなくていけなくなってしまいます。
このお手入れ時期を、美観と清潔を保つ為には当然のことと受け入れられるのか、暮らし始めてからこんなにお手入れが必要だったのか…と負担に感じてしまうのかということも、和室を設けるか設けないかということを決める目安の一つです。
和室はホッとできる空間にもなり、お客様をもてなす余所行きの空間にもなれる場所です。便利な部屋であり、子育て中には様々役立つ場面が出てくることと思います。ただ、なんとなく和室を設けるのではなく、家族構成、家族の暮らし方、床面積に合わせて計画することが大切です。
■ 注文住宅ならではのこだわりの和室にする為、壁の仕様の種類や漆喰や土の塗り壁、無垢材、畳など内装に使う素材について確認していきましょう。