木造住宅が地震で倒壊する割合と調査結果からわかること
大地震が発生した時に、実際に倒壊してしまった木造住宅は多数あります。鉄骨造の住宅と比べると、確かに木造住宅の方が数多く被害を受けています。しかし、被害を受けていない木造住宅も少なくありません。
絶対数が違うので、倒壊した木造住宅のニュース映像が多くなってしまうという現実もあります。
ここでは、熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会の集計を参考にして倒壊の理由を見て行きたいと思います。建築時別の細かな集計結果も出ているのですが、全ての建築時期の総計参考にします。
木造住宅 | S造 | RC造 | |
無被害 | 411(21,2%) | 131(60%) | 36(70,6%) |
軽微・小破・中破 | 997(51,4%) | 62(28, 4%) | 13(25,5%) |
大破 | 227(11,7%) | 17(7, 8%) | 0 |
倒壊・崩壊 | 305(15,7%) | 8(3, 7%) | 2(3,9%) |
小計 | 1,940(100%) | 218(100%) | 51(100%) |
この集計結果の他に、① 前震で被害が軽微であった木造住宅が本震で倒壊した例が多数確認された。② 新耐震以前の建築確認の木造住宅、店舗併用の2階建て木造住宅の倒壊が多数確認された。③ 新耐震以降の建築確認の木造住宅には、軽微な接合方法であったものが多く確認された。というような調査結果も報告されています。詳しくは参考資料をご覧ください。
参考資料 熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会・建築研究所熊本地震建築物被害調査検討委員会
参考資料 国土交通省 「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
① 前震で被害が軽微であった木造住宅が本震で倒壊した例が多数確認された
地震は1回だけで収まることは少なく繰り返し発生します。その為、始めの数回では耐えられた家が、繰り返される揺れによって、住宅への負担が蓄積し、倒壊してしまうことがあります。
例えば、数年前に大地震があった時は無事だったが新たな地震で倒壊してしまったという場合には、数年前の地震で家が無傷だったわけではなく、見えない被害を受けていたということも考えられます。
② 新耐震以前の建築確認の木造住宅、店舗併用の2階建て木造住宅の倒壊が多数確認された。
店舗用住宅は住居用の住宅と違い、がらんどう状態の間取りが多くあります。その結果、筋交いの入った耐力壁が少ないため、地震に弱い建物になってしまう可能性があります。
住居専用の戸建て住宅でも、吹き抜けやスキップフロアを採用した住宅は、家の中の空間が拡がるので、店舗住宅と同じようなリスクが発生する恐れがあります。その為、構造計算に基づいた設計をすることが重要です。
③ 新耐震以降の建築確認の木造住宅には、軽微な接合方法であったものが多く確認された。
ここに記載されている軽微な接合方法とは、住宅の構造部である柱や梁、土台の接合部が地震に耐えられる接合ではなかったということです。
地震に強い家にする為に、柱は荷重がなるべく均等になる様に配置する、従来の根太工法よりも水平力を保つことができる剛床工法を採用する、耐震金物を適切に配置する地震に強い家にする為には耐力壁の壁量のバランス、偏心率(捻れに対する抵抗の割合)などの建築技術が求められます。
正しく適切に建築された木造住宅の耐震性は、決して低くはありません。どのように建築するかということが地震に強い家にする鍵なのです。
参考サイト 林野庁 木造住宅の耐震性について
→関連記事 木造住宅は、RC造や鉄骨造に比べると耐震性が低いとされていますが、そんなことはありません。地震の揺れは、重量が重い建物ほど、大きくなるので、木造住宅は、RC造や鉄骨造より、揺れが抑えられるのです。ではなぜ、揺れが抑えられるはずの木造住宅が、数多く倒壊してしまったのでしょうか?
構造計算と建築基準法に定められている耐震等級
建築基準法によって最低限備えなければならない耐震性が定められています。しかし、木造住宅の場合、この耐震性だけで地震に対する備えは万全と過信することはできません。
その理由は主に2つあります。ひとつは構造計算が義務付けられていないこと、もう一つは内部結露対策に対する基準がないことです。
構造計算とは?
地震や台風、浜松ではあまり心配のない積雪などの自然災害、積載荷重に対して、住宅が安全を保てる度合いをすることです。算出する計算です。
積載荷重 固定荷重以外に住宅にかかる重さで、床設計用の積載荷重、架構設計用の積載荷重、地震力算出用の積載荷重があります。
床設計用の積載荷重 戸建て住宅の居室に求められる床設計用の積載荷重は、1800N(約180kg)/m2です。この数字の意味は、家の中に家、1㎡に対して族の体重、家具、家電などを合計した重量が、部屋の中で部分的に集中して置かれる状態であっても、約180kgまでは安全であるという基準です。
架構設計用の積載荷重 住宅全体に求められる架構設計用の積載荷重は、1300N(約130kg)/m2です。家の中には、ピアノや書庫などの重量の大きい部分と、客間や廊下など重量の小さな部分があります。これらの重みは住宅を支えている梁と柱、基礎によって、家全体に分散されるため、平均的に重みがかかります。この平均的な重みを表す数字が架構設計用の積載荷重です。
地震力算出用の積載荷重 地震が発生した際に耐えられる重さを表す地震力算出用の積載荷重は、600N(約600g)/m2です。地震の際に住宅にかかる負担は、積載荷重と固定荷重を合わせた住宅の重さに比例すると考えられています。
これらの数字を正確に割り出す計算が構造計算です。地震に強い家にする為には、構造計算に基づいた設計をすることが非常に重要です。しかしながら、建築基準法には、2階建てまでの木造住宅には構造計算が義務付けられていません。
耐震には3つの等級がありますが、基準を満たせば最高等級である3の認定もとれます。その基準は主に壁量、耐力壁線間の距離、床組や接合部等の強さ、構造耐力上主要な部分の部材の種別、寸法、量及び間隔、構造強度です。
参考サイト フラット35 耐震性に関する基準(耐震等級3(構造躯体の倒壊等防止))の概要
現在の建築基準法では、2階建てまでの木造建築に対しては、構造計算をしていなくても、この基準を満たすと耐震等級が認定されます。もちろん、耐震等級には意味があり、地震に耐える性能は等級が上位になるほど上がります。ただ、それだけでは十分に安全とは言い難いのです。
ところが実際には、構造計算のされていない住宅は意外に多くあります。その理由には、消費者側に構造計算の重要性が広く認知されていない、建築会社にとっては構造計算をすると建築費が上がってしまうということがあげられます。
構造計算に基づく設計の家であれば、店舗住宅のように1階部分ががらんどうの間取りであっても、大きな拭き抜けや窓のある住宅であっても、地震に強い家が完成します。
→関連記事 日本全国、どの地にあっても、地震のリスクは回避できません。ここ浜松では、東海地震への備えが必要です。命は助かったものの、建てたばかりの家が倒壊し、住宅ローンだけが残ったというケースも少なくありません。田畑工事は、そのようなリスクは、絶対に回避しなくてはならないと考えます。その為には、国の定めた建築基準法を満たしているというだけでは安心できません。想定外と言われるような地震や台風に襲われても、ご家族の命と生活を守る家を建てることが、田畑工事の信念です。
地震に強い家には耐震性を持続させる対策が必要
どんなに優れた耐震性能を備えた住宅であっても、構造部の腐蝕への対策が施されていなければ、経年で耐震性能は低下していきます。内部結露、雨漏りなどによって構造部が腐食すると、シロアリが発生し構造部を食い荒らしてしまう為、耐震性が低下してしまうからです。
断熱材の施工方法や、断熱性と気密性に応じた換気計画で内部結露を防止し、屋根や壁の継ぎ目から雨漏りをさせない丁寧で確実な施工、シロアリ被害のリスクの低い基礎土台の造り方などによって、耐震性を持続させることが大切です。
優れた耐震構造と構造計算に基づいた設計に加えて、免震や制震、エアー断震などもより地震への備えを手堅くします。何よりも大切なことは、家づくりの際に、地震対策について十分な説明を受けることです。
建築会社によって、構造計算について触れない説明もあれば、構造計算の必要性についての説明もあると思います。説明を聞いた上で、十分に納得のいく地震への備えの方法を選びましょう。
→関連記事 家づくりの際に、非常に重要なことは、湿気対策の講じ方です。新築時の湿気対策が不十分な住宅は、早く劣化して耐久性が低くなり、地震に弱い家になるとともに、家族の健康を守れない家になってしまいます。
浜松で家族の暮らしに寄り添った自然素材の家を造る工務店
田畑工事は、「ご家族が生涯を通じて、健康・快適に暮らせる住まい」
という創業以来の想いを基に、家づくりをしています。
自然素材で建てられた家、一世代だけで終わる家ではなく、子や孫の代まで、心地よく暮らせる家、家族それぞれのライフスタイルに寄り添った家をお考えであれば、ぜひ田畑工事のモデルハウス見学や家づくり相談においでください。