屋根の種類と形
玄関の近くまで来ると屋根の形は見えませんが、通りから見ると屋根の形が住宅の外観の印象の多くを占めています。その為、外観デザインを決める際には、屋根の形も大切なポイントの一つです。まず初めに視覚的な観点から、屋根の種類と形を見て行きましょう。
切妻屋根
シンプルな三角形の屋根です。日本だけではなく、海外でも昔から親しまれている屋根の形です。屋根の2つの面が同じ長さのデザインと、片側が長く片側が短いタイプというように、正三角形の屋根、不等辺三角形、二等辺三角形があります。
また、住宅の形状と組み合わせたると、三角屋根が外壁から飛び出ていない軒の出がないデザイン、少しだけ飛び出ている軒の出が浅いデザイン、三角屋根が外壁にかぶさっている軒の出が深いデザインがあります。
凡庸な外観になると思われるかもしれませんが、屋根の傾斜、三角の種類、外壁との関係によって、デザイン性が高くもなり、平凡にもなる屋根です。おしゃれで個性的な切り妻屋根の家も少なくありません。
寄棟屋根
4つの面で構成される屋根で、洋風な住宅にも和風な住宅にも調和させやすい形です。落ち着いた雰囲気を出したい、周辺の景観にすんなり溶け込む外観にしたいという希望を叶える無難な屋根です。
他の屋根と比べると、住宅の外観をどの方向から見ても見栄えが良い利便性もあります。ただ、雨樋の数が他の屋根より多くなるので、外観全体に対する雨樋の位置のバランスや、雨樋の色と屋根や外壁の色との調和に配慮する必要があります。
片流れ屋根
ひとつだけの面が片側に傾斜している屋根です。おしゃれな家を建てたい人に人気のデザインで、屋根の傾斜角度によって自在に印象を変えられます。傾斜角度を深くすると個性的な雰囲気が演出され、傾斜角度を浅くするとシンプルで自然な雰囲気が出せます。
陸屋根
片流れ屋根と同じように一つの面の屋根ですが、傾斜がありません。箱のような外観デザインはモダンな雰囲気が演出されます。
屋根の種類と形・軒による機能の違い
屋根には雨風や紫外線から家を守るという役割がありますが、この役割を果たす効率が屋根の形によって変わります。
切妻屋根
住宅に雨漏りが発生する場所は主に、取り合いと言われる屋根と外壁の接合部、屋根の先端部分であるケラバや軒の先端部にある軒先です。切り妻屋根は、この接合部が少ないので、雨漏りのリスクが抑えられます。また、切り妻屋根は2方向に軒を出せるので、2面の外壁を紫外線と雨風から守ります。
寄棟屋根
4面で構成されているため、大雨が降った際に4方向に雨水を流せます。また外壁の4面全てにかぶさっているので、全ての外壁を紫外線と雨風から守ります。
片流れ屋根
太陽光発電のパネルを他の屋根より多く搭載できる、太陽光発電に最適な傾斜角度にすると、効率よくエネルギーが得られるという良さがあります。ただ、雨水が一方向に流れていくため、雨樋が壊れやすいことと、雨水が流れていかない傾斜の上方向の外壁は、雨風や紫外線の影響を受けやすいという問題点があります。
陸屋根
他の屋根では実現できない屋上を備えられるという特徴があります。敷地の面積や周辺の環境によっては、庭が造れないというケースもあります。そのような場合には、屋上を庭のようにして楽しむことができます。
ただ雨漏りという面から考えると、陸屋根はどの屋根よりもリスクの高い屋根です。傾斜がないため、雨水を流せないからです。その為、新築時に特別な防水工事をするだけでは足りず、定期的にメンテナンスをしなくてはなりません。
屋根の種類に関わらず屋根の傾斜で変わる雨や風との関係
屋根の傾斜が深いほど、雨水を流し能力が高まりますが、強風時に受ける負担が大きくなります。屋根の傾斜を緩くすると、強風時に受ける負担は減りますが、雨水を流す能力は低下します。
屋根の種類に関わらず軒が家に与える影響
どの屋根の種類であっても、軒の出によって雨漏りリスクや日射遮蔽の度合いが変わります。軒の出は深いほど、外壁は雨風からも紫外線からも守られます。
雨漏りリスクと軒の関係
外壁が雨風や紫外線から守られるということは、住宅全体の経年劣化の進行度に大きく関わります。雨漏りはもちろんですが、紫外線によってクラックという外壁にひび割れが発生することがあります。すると、外壁からも雨水が住宅の内部に浸透していってしまうからです。
日射遮蔽と軒の関係
夏の日射遮蔽は室温に大きく関わります。陽射しは年間を通して明るさを、冬は暖かさを届けてくれる自然の恵みではありますが、夏は室温を上げてしまいます。軒によって室温の上昇を妨げる確率が高くなれば、冷房の効率が上がり省エネで暮らせます。また、陽射しに含まれる紫外線は、家具や内装を褪色させてしまうことがあります。
雨漏りリスクに関しても、日射遮蔽に関しても、同じ軒の出の深さであれば、方形屋根、切り妻屋根、片流れ屋根の順で同じ種類の屋根であれば、軒の出が深い方が外壁を守る確率が高くなります。
■ 日本の住宅には、昔から深い軒下がありました。近年は、建築面積や建築費を節約する為に、箱形の家が増え、軒は省かれてしまうことも少なくありません。しかし、軒のある家は、日本の風土気候に調和する暮らしやすい家です。
コラム 軒のある家の暮らしやすさ
屋根の種類と形によって変わる家の中の空間と換気のしやすさ
屋根の種類や形、高さによって小屋裏空間の広さと換気のしやすさが変わります。
小屋裏空間の広さが室内の空間に与える影響
天井と屋根の間の空間は、天井を取り払うことによって室内に取り込むことも、天井をつけて収納や屋根裏部屋として使うこともできます。どちらの場合であっても、屋根の種類や形、高さによって、空間の広さは変わります。勾配がきついほど、小屋裏の空間は縦に拡がり、勾配が緩くなるにしたがって空間が少なくなります。
天井を付けずに居室から屋根までの空間を繋げると、平屋であっても高い位置に窓がつけられます。その結果、平屋が持つ「家の奥まで陽射しが採り込みにくい」という問題を解消するほか、広々とした開放的な空間が生まれます。2階建ての家ではさらにダイナミックな空間が生まれます。
■ 梁が見える天井は、町家や古民家に見られる日本家屋の特徴の一つでもありますが、近年、梁見せ天井の魅力に注目して、家づくりを進めたいと思う人が増えています。梁を見せる天井の良さ、注意点、費用について考えていきましょう。
コラム 梁を見せる天井の魅力と注意点
屋根の種類と形によって変わる家の中の空間と換気のしやすさ
小屋裏は太陽の直射によって熱がこもりやすい場所です。その為小屋裏には、この熱を放出させる換気能力が求められますが、屋根の種類や高さによって、換気能力が変わります。
切妻屋根
三角の頂点部分に換気棟という換気用の排気口を設けられます。その結果、暖められて上昇した空気や湿気が家の外に排出されます。換気棟は、排水口から雨水が流れ出るようになっているので、雨仕舞に関しても心配ありません。
寄棟屋根
切り妻屋根と比較すると、屋根断熱の性能にもよりますが小屋裏換気が難しい屋根です。その為、屋根の断熱性能を高くする、軒裏で吸排気を行うといった設計が多くあります。
片流れ屋根
片流れ屋根の小屋裏換気には、軒裏に吸排気孔を設ける、軒裏に吸気口+棟部に排気口を設ける、軒裏に吸気孔+妻壁に排気孔、両妻壁に吸排気孔を設けるという方法があります。この中で軒裏吸排気と屋根断熱が多く採用されています。ただ、片流れ屋根の小屋裏換気は、確実な基準がないため、どの方法を採用した場合にも、換気口からの雨水侵入への対策が必要です。
参考サイト 屋根形状の違いが小屋裏の自然換気量に及ぼす影響と夏期の排熱効果
屋根は種類の違い意外に、傾斜角度や軒の深さによって、外観デザインにも、家の中の空間や室内環境にも影響の大きい重要な部分です。その要素に対しても、最も良い影響を得られるような屋根を選びましょう。
浜松で家族の暮らしに寄り添った自然素材の家を造る工務店
田畑工事は、「ご家族が生涯を通じて、健康・快適に暮らせる住まい」
という創業以来の想いを基に、家づくりをしています。
自然素材で建てられた家、一世代だけで終わる家ではなく、子や孫の代まで、心地よく暮らせる家、家族それぞれのライフスタイルに寄り添った家をお考えであれば、ぜひ田畑工事のモデルハウス見学や家づくり相談においでください。