木造軸組み工法
日本の戸建て住宅のうち、木造の住宅は、在来工法とも呼ばれる木造軸組み工法で建築されています。コンクリートの基礎に載せた木材の土台の上に、柱を建てて金物で緊結し、梁を渡して構造部を造る工法です。さらに筋交いの入った耐力壁を配置し、柱と梁、耐力壁で地震や台風による横揺れを受けとめます。
間取りプランに合わせて、耐力壁の配置を決められるので、間取りや開口部の自由度が木造軸組み工法の魅力の一つです。部屋と部屋を区切る間仕切壁には、筋交いの入った耐力壁を減らし、外壁に多く配置すると、将来的に、間取りの変更がしやすくもなります。
間取りの自由度が高く可変性もある
子育てに備えて家づくりを計画されるご家族の多くは、子育てしやすい間取りを念頭に家づくりを進められます。しかし、家を建てたタイミングにもよりますが、年月が経つと、ライフスタイルや家族構成の変化がおきます。第二子が誕生する、子供が受験期を迎えるなど、子育て中には、子供の成長に応じて、暮らしやすい家の間取りは変わり続けます。さらに、子供が独立する、結婚した子供家族と同居するなど、大きな変化もやってくるでしょう。
間取りの変更がしやすいということは、その時々に、大掛かりなリフォームをしなくても、暮らしの変化に合わせて、暮らしやすい家を維持できるということです。下の子供も就学したので、子供部屋を分割するなど、小さな変化には、間仕切壁を新たに配置することで、手軽にリフォームできます。
子供が独立し、広い家を持て余すようになった、結婚した子供家族と一緒に暮らすことになったというような大きな変化には、減築して平屋にする、増築して二世帯住宅にするというようなリフォームができます。特に新築時にあらかじめ、将来の変化を見越して、減築や増築ができるように計画しておくと、スムーズにリフォームができます。このように、木造軸組み工法の家には、間取りの自由度に加え、子育てから終の棲家までの変化を受けとめる可変性を持たせることができるという良さがあります。
室内環境が調えられる
木には、断熱や蓄熱、調湿という性質があり、その性質が、室内環境を快適に調えるサポートをします。特に、木造軸組み工法と、伝統構法においては、構造部も内装材もすべて天然の木材を使うという選択ができるという魅力があります。
費用が抑えられる
木造軸組み工法の住宅は、木造の家の中で最も多く建てられている為、建材が豊富に出回っています。予算に合わせて、豊富な建材の中から、適当な建材を選べるので、建築費の制限の中に収めやすいという良さがあります。
木造軸組み工法の注意点
木造軸組み工法には、良い点がたくさんあり、魅力のある家が多くある一方、暮らしやすい家とは言い難い住宅も存在します。その原因は、規格が定められていないことにあります。建築基準法は、良質な住宅を生み出すには、十分な基準ではありません。
木造軸組み工法で建築された家の中には、構造計算に基づいた高い耐震性能、最小限のエネルギーで1年を通して快適な室温を維持できる断熱性を備えた家もあれば、構造計算をしていない建築基準法ギリギリの耐震性、多くのエネルギーを消費しなければ、快適な室温を維持できない断熱性、自然素材ではなく、集成材やビニルクロスなどの合成建材というような組み合わせの家もあります。
同時に、天然の木材は、良い面をたくさん備えている一方、扱いが難しいという面も持っています。乾燥の度合いによって収縮する為、扱いが難しく、大工の腕によって仕上がりが左右されます。また、間取りの自由度が高い分、設計力によって、暮らしやすい家にもなり、暮らしにくい家にもなってしまいます。
加えて、過去に起こった大地震の度に、ニュースで倒壊した木造住宅の映像が繰り返し報じられました。このような印象から、木造住宅は地震に弱いと思われている方も多いのではないでしょうか?しかし、木造住宅そのものが地震に弱いわけでも、瓦屋根が載っているから倒壊しやすいわけでもありません。十分な耐震対策と、結露による構造部の劣化を防ぐ備えのある木造の家は、地震に対して、強い耐性を持ち合わせています。木造の家を建てる際には、施工業者によって、住宅の質が大きく変わるということを知った上で、計画を進めることが大切です。
伝統構法
木造軸組み工法と同じだと思われている方も多いのですが、伝統構法は、耐震に対する考え方が、木造軸組み工法とは異なります。柱は、直接地面に置いた石の上に建てられます。そして、木造軸組み工法で使われる柱は梁よりも、太い木材を使い、構造部が組みたてられます。地震の横揺れは、太い柱と梁、土壁が、それぞれしなりながら受け流します。伝統構法で建築された築後100年以上の古民家が、現在も多数残っていることから、伝統構法の家の耐久性の高さは証明されています。
天然の木材だけで作られるため、高温多湿な日本においても、暮らしやすい室内環境が調い、石の上に柱が立てられるので、床下の通気が良く、構造部の劣化が抑えられています。ただ、現在に建築基準法においては、地震に対する考え方は耐震です。伝統構法は免震という考え方なので、建築基準法上、建築が難しいことと、太い柱や梁を使うため、建材費が高額になってしまうということから、近年は、伝統構法で建築される戸建て住宅は減ってしまいました。
参考サイト 伝統構法とは
木造枠組壁工法
木造枠組壁工法は、基準に沿って作られる規格建材であるパネルと枠を組みたてて家を建てるツーバイフォーとも呼ばれる工法です。木造枠組壁工法の良さは、国際規格材を使う為、設計や施工の技術に関わらず、均一な仕上がりになることと、壁と天井の6面で地震の横揺れを受けとめるので、耐震性を高めやすいことです。
一方、家の内部の壁の位置が決められているため、間取りの自由度が低く、リフォームの際には、間仕切壁を増やしたり減らしたりという簡単な方法しか取れません。ただ、国際的な基準で作られている規格材は、流通量が豊富なので、建築費は抑えられます。
金物工法
金物工法の家は、RC造のようなラーメン構造の木造の家です。設計に合わせて、工場で作成された構造計算に基づいた構造用集成材で、頑強な枠を造り、外壁に一般的な木造枠組壁工法に使われる建材より、厚みのある耐力壁が使われます。その結果、家の中は箱のような状態になるので、吹き抜けやインナーガレージ、壁面いっぱいの大開口など、木造枠組壁工法には、耐震上、不可能な設計にすることもできます。将来的なリフォームの、制限なく自由にできます。
一方、構造用集成材と天然の木材には、異なった性質があります。構造用集成材には、安定した強度があるという良さがありますが、接着剤が使われているので、天然の木材のような調湿、通気、断熱、蓄熱といった性質は持ち合わせていません。その為、内装に天然の木材を使っていても、天然の木材だけで建築された家と同じような室内環境が創られるとは限りません。
木造の家は、工法による違いによって、間取りの自由度、室内環境、可変性、費用が変わってきます。自分たち家族が望む家に最適な工法を選んで、良質な家を実現させましょう。