木造住宅の工法の種類による構造の違い
日本の戸建て住宅の中で最も多い住宅は木造住宅ですが、一口に木造住宅と言っても構造の違う4種類の住宅があります。それぞれの特徴を確認していきましょう。
木造軸組み工法
木造住宅の大半を占める工法です。コンクリートの基礎に載せた木材の土台の上に、柱を建てて金物で緊結し、梁を渡して構造部を造る工法です。さらに筋交いの入った耐力壁を配置し、柱と梁、耐力壁で地震や台風による横揺れを受けとめます。
新築時の間取りの自由度の高さはもちろんのこと、暮らしの変化による間取り変更にも柔軟に対応できる良さがあります。家は長く住む所です。長い間には、暮らしの変化によって暮らしやすい間取りは変わっていきます。その際に、大掛かりなリフォームをしなくても、暮らしやすさを維持できるので、子育て期から高齢になるまで安心して暮らせます。
木造枠組壁工法
ハウスメーカーの住宅に採用されることの多いツーバイフォーとも呼ばれるパネルと枠を組みたてて住宅を建築する工法です。パネルと枠には、国際的な基準に沿って作られる国際規格建材が使われる為、設計や施工の技術に関わらず、均一な仕上がりになるという良さがあります。
また、耐震性を高める為に、壁と天井の6面で地震の横揺れを受けとめられるよう、家の内部の壁の位置が決められています。その為、耐震性は高いのですが、間取りの自由度が低く、暮らしの変化に合わせてリフォームをする際にも多くの制限があります。
参考サイト 日本ツーバイフォー建築協会 工法技術 材料・規格
金物工法
工場で製作された構造用集成材を使い、RC造のようなラーメン構造で建築する工法です。金物構法で使われる構造用集成材は、工場で製作されるという共通点はありますが、規格が統一されている木造枠組み工法の規格木材と違い、一戸一戸の設計デザインに合わせて算出された構造計算に基づいて製作されます。
強度の高い枠と、厚い耐力壁で頑強な箱のような空間を生み出すため、高い耐震性を維持したまま、木造枠組み工法以上に自由に大空間をデザインすることができます。ただ、比較的新しい工法であることから、接着剤が使われている構造用集成材の健康への影響や、経年変化の進行状況などに対しては、未知の部分もあります。
伝統構法
現在主流の木造軸組み工法の基となった日本古来の木造住宅の構造です。ただ、木造軸組み工法とは地震への対策という面から見た時に、構造上の大きな違いがあります。木造軸組み工法では耐震という考え方に基づき、筋交いの入った耐力壁で地震の横揺れを受けとめます。
伝統構法では、免震という考え方に基づき、太い木材で造られた頑強な柱や梁で構造部が組み立てられ、太い柱と梁、土壁が、それぞれしなりながら地震の横揺れを受け流します。
参考サイト 伝統的構法の定義(伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会 歴史構法部会)
構造の種類による違い
同じ木造住宅であっても、構造の違いによって構造計算を含む地震への備え方、新築時と暮らしの変化に対する間取りの自由度、家づくりにかかる費用が変わります。また、木造軸組み工法には、他の工法にはない問題点があります。
木造軸組み工法の問題点
木造軸組み工法には、木造枠組み工法(ツーバイフォー)や金物工法にはない良さがありますが問題点もあります。その理由は規格がないからです。規格がない為に高い自由度があるのですが、木造枠組み工法(ツーバイフォー)や金物工法と比較すると、耐震性を含む住宅性能に大きなばらつきがあります。
構造計算と木造軸組み工法の関係
構造計算とは地震などの自然の脅威に対する建物の構造の安全性を算出する計算です。木造枠組み工法(ツーバイフォー)には構造計算に基づいて設計しなくても十分な耐震性を備えられるという特性がありますが、それ以外の木造住宅を地震に強い家にする為には必要不可欠な計算です。
金物工法は建築に使う構造用集成材から構造計算に基づいて作成されますが、木造軸組み工法の場合、構造計算をする家としない家が存在します。その理由は建築基準法において、2階建てまでの木造住宅には構造計算が義務化されていないからです。確認申請承認=確実な耐震性ではありません。
そして残念なことに、建築費を抑える為に構造計算をしない工務店があることも、家を建てようという人々に、構造計算の大切さが広く認知されていないことも事実です。
確かに新築計画をする際にも、新居で暮らし始めてからも、大地震が発生しなければ構造計算の必要性は具体的に感じることができません。運が良ければ大地震に遭遇せず、耐震性の低い家で生涯を無事に暮らせることもあります。
しかし、地震大国の日本において家族の命と財産を守る為には、どんな地震が発生してもビクともしない家にすることが重要な課題です。木造軸組み工法での家づくりを計画する際には、構造計算をすることを前提に進めていくことが欠かせない条件です。
参考資料 構造計算資料
参考サイト 日本住宅・木材技術センター 構造計算の方法について
■ 万全な地震対策を備えた木造住宅は地震に強い家です。新築時に地震の強い家にする為に必要なことを確認していきましょう。
コラム 地震に強い家の特徴とは?安心して安全に暮らせる家に必要なこと
住宅性能と木造軸組み工法の関係
近年、政府は省エネ性能の高い家を建てるという方針を進めています。ただ、現実には建築基準法に定められた基準ギリギリの家は、少ないエネルギーで快適な室温を維持でき、家の中の温度差がほとんどないというような室内環境を作れるだけの断熱性は備えていません。
また、内装に使われる建材にも規定がないので、有害な物質を揮発させる接着剤が使われた集成材や、ビニルクロスが使われている住宅も存在します。室内環境の良さを補う無垢材や畳などを使った住宅も、石油由来の建材を使っている住宅も、同じく木造軸組み工法の住です。
その結果、木造軸組み工法の家には、木造枠組み工法や金物工法の家に比べて住宅の質に対するばらつきの幅が大きいという問題があります。その為、木造軸組み工法での家づくりを計画する際には、自分たちが望む理想の家に合う家づくりの指針を持った工務店といっしょに進めることが家づくりの結果を左右します。
■ 木造軸組み工法の良さの一つは自然素材の家を建てられることです。
■ 暮らし始めてからの家計に優しく快適な家にする為には、どのように家づくりを進めるべきなのでしょうか?
新築時と暮らしの変化に対する間取りの自由度
木造軸組み工法には、耐力壁の位置を調整することによって間取りの自由度を高められる、大きな窓を設けたり間口の広いガレージを設けたりできるといった良さがあります。規格材ではないので、整形地以外にも敷地の形状に合わせて柔軟な設計ができます。また、暮らしの変化に合わせて部屋数を増やす、減らす、使用目的に合わせてしつらえを変えるなどのリフォームができます。
SE構法は内部の壁が初めからないので、さらに自由な間取りの変更ができ、木造軸組み工法では実現できないような大空間を生み出すこともできます。木造枠組み工法は、耐震性を高める為に壁の位置が定められているので、間取りには制限が多く、大空間も造れません。
家づくりにかかる費用
木造軸組み工法の住宅は、木造の家の中で最も多く建てられている為、建材が豊富に出回っています。その結果、予算に合わせて、豊富な建材の中から、適当な建材を選べるので、建築費の制限の中に収めやすいという良さがあります。
木造枠組み工法の住宅は、木造軸組み工法よりは費用が嵩みますが、SE構法や伝統構法より費用を抑えられます。金物工法と伝統構法の住宅は、建てられている住宅の数が少ない為、木造軸組み工法や木造枠組み工法に比較すると建材費が嵩む為建築費用も高額です。
木造住宅のうち、構造部にも内装にもふんだんに自然素材を使える住宅は木造軸組み工法の住宅と伝統構法の住宅です。木造住宅のうち、間取りの自由度と可変性が優れている住宅は、木造軸組み工法と金物工法の住宅です。木造住宅のうち、最も費用を抑えられる住宅は木造軸組み工法の住宅です。
そして木造軸組み工法の住宅は、構造計算の有無と施工の方法によって、どの工法で建築した住宅よりも優れた住宅にもなる可能性を持ち合わせた住宅です。日本の気候に合った自然素材を使い、構想計算を基に設計された木造軸組み工法の住宅で理想の家を実現させましょう。
参考サイト 日本木材総合情報センター Q17 木造軸組み工法、2×4工法などのうち、どの建て方が一番安いですか?