注文住宅の費用の内訳

注文住宅にかかる費用の内訳は、土地の購入費と建築費です。

土地の購入費用

土地の価格は、地域によって大きく異なります。都心部に家を建てる場合には、家づくり費用の半分近くが土地の購入費に充てられるケースも少なくありません。全国的な割合の平均を見てみると、3割～4割が土地の購入費に充てられています。

住宅金融支援機構が発表している2020年フラット35利用者調査を見てみると、土地の購入費用の全国平均は1,436万円、首都圏では2,310万円、静岡県のある東海圏は1,300万円です。ただ、静岡県は広いので、市町村によって土地の価格に幅があります。

参考サイト静岡県公式ホームページ　令和3年地価公示結果

参考資料　住宅金融支援機構「2020年フラット35利用者調査」

家族にとって住まう場所は暮らしに大きな影響があります。どんなに暮らしやすい間取りや室内環境の調った家であっても、利便性が良くなければ、快適な暮らしはできません。通勤通学に2時間以上かかる、日常生活の買い物ができる店が少ない、市役所や病院が遠いといった暮らしにくさが生まれてしまいます。また、公園や緑が少ない、治安が悪いというような環境では子育てがし難いでしょう。

ただ、土地の購入費用が大きくなるほど、建築費に充てられる費用が減ってしまいます。家族の暮らしにとっての利便性が良く、周辺環境も好ましい土地は必要ですが、完璧に理想を満たす土地を、予算の制限内で見つけることは非常に難しいです。土地探しの際には優先順位を決めておき、妥協できる点をいくつか絞っておくことも必要です。

また、土地には同じ地域内であっても、変形地や段差のある土地が整形地より低い価格で売り出されていることがあります。このような場合、土地の購入費用を抑えられるので魅力的ではあるのですが、風通しや日当たりを確保できない家になってしまう可能性もあります。その為、土地探しは注文住宅の施工を依頼する工務店や住宅会社といっしょに進めることが理想的な方法です。

注文住宅の建築費の内訳

建築費には、本体工事費、付帯工事費、諸費用が含まれています。

本体工事費

建築費のうちおよそ8割を占める費用が本体工事費です。住宅の建築に関わる全ての工事が含まれています。基礎や構造部、屋根など住宅の骨格だけではなく、内装や住宅性能に関わる要素、配線や配管工事も含まれています。外装や内装に使う建材、省エネ・断熱性能を左右する断熱材や窓とドア、家の中の空気環境や室温を調える為の空調や暖房設備、システムバスやシステムキッチンのグレードなどの選び方によって建築費は変わってきます。

省エネ・断熱性能

グレードの高い断熱材や外壁材、窓や玄関ドア、勝手口ドアなどを使う、深い軒を設けるなどの方法で省エネ性を高められます。省エネ性は高めれば高めるほど、少ないエネルギーで季節に応じた室温を調えられるので、快適な環境と家計の節約に役立つ一方、建築時には費用が嵩みます。

♣　軒には、室内環境を調える役割と、住宅の外壁や開口部を雨風紫外線から守るという働きがあります。その為、軒の有無や軒の深さは住宅に大きな影響を与え、暮らしやすさと耐久性を変化させます。

コラム　軒とは？軒の深さと軒の高さの意味

♣　新築住宅の間取りプランを作成する際、窓の位置はとても重要です。窓の種類や寸法、窓を配置する高さによって、家の中の環境が大きく変わるからです。窓の種類や位置は、外観のデザイン性にも影響を与えます。

コラム　住宅の窓は種類や配置で暮らしを変える

内装に使う建材

クッションフロアやビニルクロスを多用すると建築費は抑えられますが、室内の快適性は低下します。自然素材を使うと、空気中に健康に悪影響のある有害な化学物質が揮発されないので、きれいな空気環境が調えやすくなります。さらに自然素材の調湿性によって、室温と体感温度の差が抑えられるので、省エネ性にも貢献します。

♣　子育てに備えて家を建てる若いご夫婦は少なくありません。その際に、一番に考えることは、子どもの健康ではないでしょうか？病気や怪我をさせずにのびのび育てて行きたいと願わない親はありません。自然素材の家にはそのような子育て観に向いている家ですが、価格が高いのでは？デメリットはないのか？といった不安も感じられることと思います。

コラム　自然素材の家での子育てにデメリットはある？

空調や暖房設備

気密性の高い住宅にとって換気計画は必須ですが、空調や暖房機器には選択肢があります。建築費を抑える為に新築時には計画せず、エアコンだけにしておくという方法もありますが、間取りと併せて空調や暖房の計画を進めるという方法が理想的です。

空気を循環させる間取りと全館空調やエアコンなどを組み合わせると、壁や床、開口部の断熱効果が効果を発揮しやすくなるからです。その結果、場所による温度差、冷暖房をしている時間帯としていない時間帯の温度差が抑えられます。

全館空調は新築時でなければ設置できません。床暖房や置き型エアコンは後付けもできますが、新築時より費用が嵩みます。建築費が嵩んだとしても新築時に設けておく方が長い目で見ると費用を抑えらます。

♣　戸建ての家を新築する際には、冷暖房の方法についても計画が必要です。暖房の方法には、エアコンや床暖房、薪ストーブなどの他に全館空調があります。全館空調は、冷暖房機器が設置されている部屋だけではなく、家全体の温度を調えるという考え方に基づいた住宅設備機器です。

コラム　全館空調とは戸建ての家を快適な家にする空調設備

間取りや収納

収納や間仕切り、建具が多いほど建築費が嵩みます。一方、廊下や玄関ホールがない間取り、細かく居室が分かれていない間取りの家は建築費が抑えられます。

リビングとダイニングキッチンを繋げるなどの間取りは、建築費を抑えられる上に、空気を循環させやすいので、家の中の温度差にも良い影響があります。

また、収納は多ければ良いというものではなく、家族の動線上にある、収納したい物のサイズに合っているなど、効率の良さが求められます。その為、無駄に収納を増やすより、活かせる収納を設けることが大切です。

付帯工事費

建築費のうちおよそ2割を占める工事費が付帯工事費です。主に、外構工事や水道管やガス管の引き込み工事、家の中で使う電気設備の工事が含まれます。ただ、付帯工事費の範囲は施工する会社の付帯工事費の範囲に対する考え方や、外構の造り方によって、2割以下に収まることもあれば、2割以上になることもあります。

水道管やガス管の引き込み工事、家の中で使う電気設備の工事などは必須項目なので予算を削ることはできませ。一方、外構に関しては予算に大きく関係します。特に中庭を設ける場合には、新居が完成してからボチボチ整えて行こうという訳には行きません。

新築時にしっかりと計画しておかなければ、雑草だらけで水はけが悪く、虫が湧いてしまうような中庭になる恐れもあります。家が建ってからロの字型やコの字型の中庭に木を植えたり、ウッドデッキを設けたりすることはできないので新築時の計画が重要です。

諸費用

建築費の1割弱は諸費用に使われます。工事請負契約や住宅ローン関係の事務手数料、保険料の他に、地鎮祭や棟上げ式の費用、ご近所への挨拶回り、新居で使う家具の購入費用、引っ越しにかかる費用などが含まれます。

本体工事費に対する予算の立て方

どこか懐かしい広い土間のある家　浜松市K様邸

注文住宅の予算を立てる際に、本体工事費にかかる予算の一つ一つを吟味することは、土地選びの次に予算を左右する重大なポイントです。本体工事費を左右する要素は非常に多くあります。その一つ一つに対して予算の範囲内に収める為のバランスを考えながら選んでいかなくてはなりません。どれをとっても暮らし始めてからの生活に大きく影響します。

住宅金融支援機構が発表している2020年フラット35利用者調査を見てみると、住宅の建築費の全国平均は2,874万円です。それぞれのご家庭の家づくり予算によって増減はありますが、その中から付帯工事費と諸費用を除くと、およそ2,000万円内で、バランスよく配分していく必要があります。

断熱性の数値だけを追い求める、高いグレードの住宅設備機器を導入する、高級な外装建材を使うなど、部分的に多額の予算をつぎ込むと、他の予算が圧迫されてしまうことも予想されます。

家族構成と家族の暮らし方を基本に、新しい家に望む暮らしを実現する為に外せないことと、それほど重要ではないことをより分けていくことが大切です。すべて満載てんこ盛りという状態にすると、予算の上限を軽々と突破してしまいます。

注文住宅の費用に対する考え方

融合型ライフスタイルの二世帯住宅　磐田市I様邸

 ここでは参考の為、家づくりに関わる全国の平均的な数字をあげましたが、それはあくまでも参考です。注文住宅の最も難しい部分は、予算内で理想の家を建てることです。際限なく予算を使えば理想を叶えることは容易いですが、暮らし始めてからの暮らしにゆとりがなくなってしまいます。

子どもの年齢によって、これからかかる教育費の額が変わります。家族の中の働き手の数によって年収が変わります。それぞれの家族の事情に合わせて、無理なく返済できる住宅ローンの制限内で予算を組むことが、暮らし始めてからのゆとりに繋がります。

また、土地の選び方、間取りや住宅性能など住宅の建て方によって、必要な費用は変わります。その部分は家族だけで考えていても解決に結びつかないことが少なくありません。家づくりを検討する際には、家族の年収から予算を割り出した上で、建築費の内訳や土地の選び方に関しては、施工を依頼する工務店に相談しながら進めていくという方法が理想的です。

♣　注文住宅は、家族の希望に沿って家づくりプランが進行します。間取りや外観、内装のデザイン、使用する建材や住宅設備機器、住宅性能など、全てに対して自由な選択肢があります。自由な分、理想を追い求めるあまり軽々と予算オーバーしてしまうという事態も発生します。そのような事態を避けるプランの進め方について考えていきましょう。

コラム　注文住宅の予算オーバーを避ける為には何を削る？