玄関収納の造り方
リビング中心の間取りの家ではリビングに、二世帯住宅など大人数の家族では玄関に物が溢れやすい傾向があります。リビング中心の間取りでは、帰宅した家族がリビングに直行する為、外出時に着用していた上着や、バッグなどをリビングに持ち込むからです。
大人数の家族では、玄関の三和土に何足もの靴が置かれてしまうこともあります。また、コートについた花粉が、リビング内に入り込んでしまうこともあるでしょう。
そのような状況を避ける為には、玄関の収納を充実させる必要があります。家族の暮らしにあった収納にはどのような造り方があるでしょうか?施工事例を見ながら、「家族に構成と暮らし方にあう理想の玄関収納」について考えていきましょう。
来客動線を意識したウォークスルータイプの玄関収納
帰宅した家族の動線と、訪問客の動線を分離させる玄関収納の造り方です。家族はウォークスルータイプのシューズクロークに靴や荷物をしまってから、リビングに行くので、玄関は常にすっきりしています。
土間とホールにまたがって収納を造ると、土間部分には靴やスポーツ用品、ホール部分には、上着や荷物が収納できます。土間部分に姿見をつけると、外出時には身支度の仕上げもできるので便利です。
ウォークスルータイプの良さは、通り抜けられるので、動線がスムーズであることと、風通しが良いことです。収納、特に土間収納は、造り方によっては、換気が悪くなり、カビが発生したり、嫌なニオイに悩まされたりすることがありますが、そのような心配がありません。
また、ドアや引き戸がないので、前方にデッドスペースができたり、引き戸の引き込みスペースを意識したりせずに間取りが作れます。
ウォークインタイプの土間収納
ウォークインタイプの土間収納は、面積と内部の造り方によって、無限の可能性があります。面積を広くとると、ベビーカーや自転車、スポーツ用品などをしまって置けるので、子育て中の家族、サーフィンやキャンプなどが趣味の家族には、便利です。
収納以外に、スポーツ用品や自転車のお手入れ、室内では汚れが気になるプラモデル制作などの趣味の作業をするスペースとしても使えます。内部に洗面台を設けると、靴や荷物をしまった後、洗面所に行って手洗いうがいをする手間を省いて、リビングに入れます。
ただ、ウォークインタイプは、ウォークスルータイプと違って、換気に配慮する必要があります。傘や靴から発生する水蒸気で、収納の内部の湿度が上がりやすいからです。窓を設ける、ランマなどを採り入れて上部から空気が流れるようにする、換気扇を設置するなど、間取りに合わせて、適切な換気対策をしなくてはなりません。
また、ウォークインタイプに、出入り口を設ける場合、ドアの前方がデッドスペースになってしまったり、引き戸の引き込む壁の幅を確保したりしなくてはなりません。出入り口を作らないと、無駄なスペースが生まれません。内部の棚の造り方も扉による制限が生まれないので、自由に造れます。
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ウォークインタイプの場合、収納を広くすると、様々な便利さがある一方、床面積が圧迫される、建築費が嵩むという面もあります。家全体の間取りと、家族に必要な収納量を持たせることとのバランスを十分に検討する必要があります。
床面積も玄関内の空間にも圧迫感を与えない収納
リビングにファミリークローゼットを設ける間取りや、2階リビングにする場合には、腰の高さの収納を設けるという方法があります。背の高い収納と違って圧迫感がなく、玄関にゆったりした雰囲気を演出できます。この高さの収納は、上部に鉢植えの植物や、花瓶に挿した花、趣味の小物などを飾ることもできます。
圧迫感を生まない背の高い収納
住宅が密集している狭小地に建てる家の場合、ウォークインタイプの収納に当てる面積葉とてない場合もあります。このような場合には、天井までの背の高い収納を設けることで、収納力を高められます。ただ、背の高い収納は圧迫感出やすいので、床、壁、天井との色や質感の調和を考えることが大切です。
玄関ホールにゆとりがある場合、奥側に天井までの収納を設けると、圧迫感がなく、大容量の収納にできます。
玄関収納の考え方
日本人にとって玄関は、昔から外の穢れを家に持ち込まないという宗教的な意味を持つ場所です。意識したことがない人がほとんどだと思いますが、帰宅時には、誰もが当たり前のように外を歩いてきた靴を脱ぎます。欧米の国々のように、靴のまま家の中に上がったり、ベッドに転がったりするというような生活スタイルの人は、ごく少数だと思います。
そして、玄関は、気持ちを切り替える場所でもあります。外出時には、どこよりも安心できる安全な寛ぎの場であり、家族の愛情に包まれている家という場所から、どんな危険があるかわからない外へと出ていく心の準備をする場所です。帰宅時には、靴を脱いだ瞬間に、仕事の緊張感から解放されるという人も多いのではないでしょうか?
内と外の切り替えをする玄関は、訪問客に対する見栄えを良くするという意味合いだけではなく、その家に住む家族が、朝は気持ちよく出かけられる場所、帰宅時には、ほっとできる場所でなくてはなりません。
そのような環境を作るためには、靴が溢れていたり、外遊びのおもちゃが散らばっていないこと、花を活けたり、絵を飾ったりする余裕がある空間であることが求められます。大きな収納を造れば、物は片付きますが、玄関の空間が圧迫されてしまうと、窮屈な玄関になってしまいます。
大きければ収納力が高いという訳でもありません。特にウォークインタイプの場合には、内部の造り方で使い勝手は大きく変わります。玄関収納を計画する際には、玄関収納に収めたい物を具体的にリストアップすること、間取り全体の床面積とのバランスを考えること、家族や来客の動線に合わせることを考え、家族に合った収納にすることが大切です。