長期優良住宅の持つ意味
外観や内装のデザイン、間取りなどとは違い、住宅の持つ性能は目に見えません。その為、家づくりに際しては、目に見える部分に意識が集中してしまうことがあります。ただ、家の中の快適さと安全性は、間取りプラン時には目に見えませんが、暮らし始めてからの家族の暮らしに大きな影響があります。
そこで、家づくりに際して建築の専門家ではない普通のご家族が、快適で安全な家を建てる目安にできる制度が長期優良住宅です。家づくりの目安になる制度には、その他にZEHを含む省エネ住宅もありますが、長期優良住宅は、省エネ性だけではなく、多角的な面からの基準が設けられています。
- 参考資料 認定制度概要パンフレット(新築版)
将来に向けて長く暮らせる家にする為の基準
戸建て住宅を長く住める家にする為には、地震に強く、優れた断熱性と気密性を持つ家にするだけでは足りません。その性能をいつまでも維持できるということが、長く暮らす為には欠かせない条件です。
その為、長期優良住宅には、いつまでも暮らしやすさと安全性を維持する為の基準が定められています。
可変性
家を建てたご夫婦には、長い期間には様々な暮らしの変化が訪れます。子どもの誕生から子どもの独立までの間には、子どもの成長に合わせて、家族の暮らしは変化し続けます。そして子どもの独立や結婚に際しては、家族構成が変わる為、暮らしやすい間取りが変わります。
大人数で暮らしやすかった家は、ご夫婦だけの暮らしには持て余してしまう部屋ができてしまうことがあります。反対に、結婚した子ども夫婦と一緒に住むことになれば、部屋数が足りなくなるかもしれません。
子育て中の小さな暮らしの変化にも、子どもの独立による大きな変化にも、手軽に間取りを変更できるようになっている家は、その時々に応じて間取りを変えられます。その結果、どのライフステージでも、常に暮らしやすさを維持できます。
バリアフリー性
家を建てたご夫婦はやがて高齢になっていきます。高齢になると、ちょっとした段差に躓いてしまったり、階段を踏み外したりするだけで、深刻な怪我に繋がってしまうことがあります。
また、車椅子を使ったり、介助が必要な生活になったりする可能性もあります。そのようないざという時になってから、バリアフリーの家に改造するのは大変なことです。新築時からバリアフリーに配慮した家であること、また将来的に本格的なバリアフリーの家にする為の備えができていることが求められます。
劣化対策
土台や柱、梁などの構造躯体が子や孫の代まで使用できるような造りになっていることと、それを維持する為に床下の空間を確保するなど、劣化を防ぐ対策が講じられていることが求められます。長期優良住宅の基準は劣化対策等級3相当です。
維持保全計画
新築時に劣化対策が講じられた構造躯体にし、どれほど優れた耐震構造にしたとしても、経年で構造部が腐朽したり、シロアリ被害にあったりしてしまえば、耐震性能は低下してしまいます。
家は、完成したタイミングですべてが完了するという訳ではありません。その家で暮らし始める時が本当の意味での家づくりのスタートとも言えます。適切なタイミングで定期的に点検をし、必要に応じて補修やシロアリ防除などをする為の計画が、長期間に渡り決められていることが重要です。
維持管理・更新の容易性
点検や補修のしやすさは、維持保全計画をスムーズにします。点検や補修に手間がかかるような造りになっていると、その都度、大きな手間と費用がかかってしまいます。維持保全計画をスムーズに行う為には、手軽に正確に点検や補修ができるような措置が講じられていることが求められます。
また、クロスやフローリングなどの内装、システムキッチンやシステムバスなどの住宅設備機器は、土台や柱、梁などの構造躯体と比較すると、耐用年数が十数年しかありません。その為、やがて張替えや交換が必要な時期がやってきます。その際に大掛かりな工事をしなくても手軽に張替えや交換のリフォームができるようになっていることも必要です。
地震・省エネ・居住空間・町並みの調和への基準
安全な暮らし、快適な暮らしができること、街並みに馴染む外観であることに対する基準も設けられています。
耐震性
地震の多い日本において高い耐震性は必要不可欠な条件です。極めてまれに発生するような大地震に際しても、家族の命と財産を守れるだけの耐震性能が求められます。長期優良住宅の耐震基準は、耐震等級2以上または免震建築物であることです。
省エネに対する基準
消費エネルギーを少なくするための取り組みでは、家庭の冷暖房に使われるエネルギーを節約することにも目が向けられています。ただ、四季のある日本で消費エネルギーを抑える為に、冷暖房をしない生活をすれば、健康に暮らすことはできません。
そこで冷暖房の効率を良くし、消費エネルギーを抑える方法が、省エネ性を高めるということです。住宅の断熱・気密性を高くする、自然のエネルギーを利用するなどの方法で、少ないエネルギーで快適な環境が創れる家を目指します。長期優良住宅の耐震基準は、省エネルギー対策等級4以上です。
- 関連コラム 省エネ住宅とは理想の暮らしができる家?
家族全員が居心地よく過ごせる空間の確保に対する基準
家族の人数に応じて必要な床面積は変わりますが、長期優良住宅では最低限の床面積として一つのフロアの床面積が40m2以上、家全体に対しては75m2以上あることが条件になっています。
- 参考資料 住生活基本計画における居住面積水準
街並みへの調和に対する基準
住宅街において、一戸一戸の住宅の外観や外構は、街並みの景観に影響を与えます。赤や紫、黄色などの強い色彩の家や、奇抜なデザインの外観や外構は、街並みの調和を乱してしまうことがあります。
ベランダに洗濯物を干さない、植栽を美しく整えるなど、より細かな基準を設けている地域もありますが、長期優良住宅では、「良好な景観の形成や、地域おける居住環境の維持向上に配慮されていること」が基準とされています。
長期優良住宅と補助金や減税、フラット35sとの関係
長期優良住宅には、その基準を満たすために建築費が嵩む、認定の為の手続き費用が掛かるといった面がありますが、補助金や減税、フラット35sの金利など、家づくりの費用がサポートされる制度を利用できる強みがあります。
補助金
こどもみらい住宅支援事業
長期優良住宅は、定額で80万円の補助金が受けられます。
- こどもみらい住宅支援事業公式サイト 新築分譲住宅の購入
地域型住宅グリーン化事業
本年度はまだ概要が発表されていませんが、昨年度は長期優良住宅に対して上限110万円の補助金が交付されていました。
加えて、地域材加算または三世代加算を併用できる場合があり、それぞれの上限は20万円と30万円です。その場合には上限額が130万円、または140万円に引き上げられていました。
- 一般社団法人木を活かす建築推進協議会 地域型住宅グリーン化事業 補助対象住宅について
減税
住宅ローン控除では、一般の住宅は控除対象になる限度額は3000万円ですが、長期優良住宅では、5000万円まで引き上げられます。
フラット35Sの金利
住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して行う住宅ローン・フラット35には、長期優良住宅にも適用される一般住宅より金利が引き下げられるフラット35Sがあります。
田畑工事は長期優良住宅を標準としています。またこどもみらい支援事業の登録事業者でもあります。何時までも安心して快適に暮らせる家の実現をぜひお手伝いさせてください。