2階水回りへの水漏れと耐震性低下の不安
梅雨の季節も爽やかに暮らす家づくり 浜松市浜北区 F様邸
【1階水回りの間取りでは、床面積によっては窮屈な洗面所になってしまうケースもありますが、このくらいの広さが取れればよいですね。】
2階に浴室を造るとリビングの床面積を圧迫する心配がないので、ゆったりした浴室を設けられます。その一方、2階の浴室には、水漏れや浴槽にお湯を張った際の重量についての不安を持つ人が多いようです。ただ、現在主流になっているユニットバスにおいて、その心配はありません。タイル張りにする在来工法の浴室の場合、相当な重量があります。
また、同じ面積を使った在来工法の浴槽と、ユニットバスの浴槽に入る湯量はユニットバスの方が少ないので、お湯を張った際の重量もユニットバスの方が少ないです。ユニットバスの形状は、節水の為に底面が湾曲している、内部にベンチがあるなど、様々なタイプがあります。どのタイプも直角の底辺を持つ在来工法の浴槽に比べると、溜めるお湯の量が少なくてすむのです。
ただ、ユニットバスであればより安心であるというだけで、たとえ在来工法の浴室を2階にあげたとしても、その程度の重量で耐震性が低下するような住宅はありません。構造計算をした上で確実な設計を基に建築される住宅は、2階に浴室を持ってきても、耐震性能が低下する心配はありません。
加えて、在来工法の浴室には経年劣化で水漏れが発生するリスクがあります。家幅がくすむ所ですから、40年、50年が経過した時に水漏れが発生しないとも限りません。過去の大地震で倒壊してしまった住宅の多くは、シロアリ被害による構造部の腐朽が原因です。
シロアリ被害が発生する理由は、床下の湿気です。湿り気のある木材はシロアリの大好物なので、浴室からの水漏れがシロアリを発生させる大きな原因になってしまうのです。その結果、耐震性が大幅に低下します。ここまで考えてくると、2階に浴室は構造部を腐朽させるリスクが1階の浴室より低いとも考えられます。
ユニットバスの場合、10年~15年が交換の目安ですが、その前に不注意で浴槽にひびが入ってしまう、コーディングが劣化して水が床下に侵入するといったことが発生することがあります。1階に浴室があると、このような水漏れはシロアリ被害に繋がってしまいますが、2階浴室であれば、シロアリ被害発生までの期間に猶予があります。大きな被害が出る前に気が付きやすく、交換や補修ができます。
■ 家づくりを計画する多くのご家族が、くつろげるリビングのある家を建てたいと望んでいます。くつろげるリビングを実現するためには、どのようなことを考えて計画を進めたらよいのでしょうか?
2階水回りへの老後の不安
木の香る子育て住宅 浜松市南区Y様邸
【洗濯に関わる家事動線短縮の為の選択肢には、1階にランドリールームを設ける間取りもあります。】
70代、80代になった時や、車椅子が必要になった時には入浴できなくなってしまうのでは…?という懸念もあると思います。子育てに備えてのタイミングで家づくりをする場合でも、ほとんどの人は、終の棲家となるまで暮らしていくことを予定しているはずです。その時に入浴出来ない家になってしまえば、終の棲家にはなりません。
そこで考えてみたいことがホームエレベーターです。新築時には必要ないので、将来的にエレベーターを設置できるスペースを設けておくという計画です。新築時には家族の人数も多く、少しでも床面積を無駄にはしたくないはずです。一方、子どもたちが成長し、独立していった後には、床面積の余裕ができます。
新築時に設ける収納スペースのうちの一つを、将来的にホームエレベーターを設置できるような配置しておけば、床面積に無駄なくホームエレベーター設置の計画ができます。ホームエレベーターは、浴室に関してだけではなく、老後の暮らしに大きな助けになります。
2階建て住宅にお住いの高齢者夫婦の中には、階段の昇り降りが大変なので2階は物置のようになっているというケースは少なくありません。そうなってしまうと、生活に使える有効範囲が狭まってしまうと同時に、掃除が行き届かなくなる他、換気状態も良くありません。その結果、住宅の劣化が早まってしまう恐れもあります。ホームエレベーターがあれば、そのような状況を回避できます。
2階水回りへの生活上の不安
2階に水回りだと水圧が低いのでは?排水音が響くのでは?といった生活上の不安もあると思いますが、どのように対処すべきでしょうか?
2階水回りの水圧
給湯器からの距離が長くなるため、水圧が低くなる、浴槽にお湯を張る時間が長い、冬は洗面所のお湯が暖かくなるまで時間がかかるといった問題が発生する恐れがあります。このような事態を起こさないためには、300Kpa以上の圧力を備えた給湯器や、暖かいお湯をため捨て水が必要ない洗面台など、住宅設備機器の選び方が重要です。施工を依頼する工務店のアドバイスを受けながら、2階水回りの適した住宅設備機器を選びましょう。
2階水回りからの排水音
2階に浴室があると、リビングへの排水音が響くのでは…?という心配をされることもあるでしょう。確かに、1階のリビングを広くとると1階ががらんどうの状態になるので、細かく居室が分かれている間取りより排水音が響く可能性は高まります。
ただ、入浴は1日1回です。長風呂の人であっても、1時間以上浴室に居ることはないのではないでしょうか?夜間に来客がある場合には多少気になるかもしれませんが、時間を調整すれば、排水音が気になることはないと思います。ただ、音に対する感度は人それぞれなので、生活音を気にする家族がいる場合や、入浴時間帯から夜間にかけての来客が多いという場合には、間取りプランの際に十分話し合うことが大切です。
■ 家づくりにあたって、快適な家にしたいという想いは、誰もが持っていると思います。快適な家には3つのポイントがあります。何時までも安心して暮らせる家であることと、心地よい環境の調った家、そして生活のしやすい家であることです。この中のどれが欠けても、快適な家は実現しません。この3つのポイントを全て備える為には、どのように家づくり計画を進めていけばよいのでしょうか?
コラム 快適な家が生み出す家族の幸せ
2階水回りで得られる暮らしやすさ
家事と子育てを一緒に楽しむ家 掛川市 K様邸
【敷地の形状と家族の暮らし方によっては、この事例のように1階水回りが回遊できる家事動線を作りやすく、時短家事に繋がるケースもあります。】
家族の生活動線がスムーズになる、広いリビングを設けられるという2階水回りの2つの良さについて考えてみましょう。
家族の生活動線がスムーズになる
ひとつは洗濯に関わる家事動線の中から、階段を使っての移動がなくなることです。平屋が人気の理由の一つは、ひとつは洗濯に関わる家事動線が楽になることですが、2階に水回りを持っていくことで、同じ効果が得られます。
特に子育て中には洗濯物の量が多く、濡れて重くなった洗濯物を持って何度も1階洗面所と2回ベランダを往復するのは大変です。しかも、毎日のことなので、2階水回りにして時短家事が実現できるのはありがたいことです。
家事と子育てを一緒に楽しむ家 掛川市 K様邸
【玄関に洗面台を設けると帰宅後の手洗いうがいがスムーズにでき、家庭内の衛生環境が向上します】
また、家族の朝の支度からも階段での移動が省かれるので、朝の忙しい時間帯が少し楽になります。着替えと洗面をすませてから1階に降りて朝食を摂るという流れができます。ただ帰宅後の衛生管理がしにくくなるので、手洗いうがいの為に1階に洗面台を設けておく必要があります。加えて、玄関の近くに階段を設ける、又はリビング階段にするなど、2階へのアクセスのしやすさにも配慮することが大切です。
明るい浴室と洗面所になる
自然光が入る洗面所で朝の支度ができる環境が調います。明るく気持ちが良いというだけではなく、蛍光灯の基でメイクをして出かけた際に、外の光の中ではメイクが濃すぎたというようなことも避けられます。また、陽射しが入る浴室はカビが発生にしにくいので衛生状態を維持しやすいという良さがあります。
2階に水回りを設ける際に検討しなくてはならないことは第一に家族の暮らし方です。住宅性能に関わる不安は、建築の技術力と住宅設備機器の選び方で必ず解決できます。しかし、家族のライフスタイルにあっていなければ、暮らしやすい家にはなりません。現在の家族の暮らし方から、「2階水回りの家を建てた後の暮らし」で起こりえるありとあらゆる局面を想像して、2階水回りにするかどうかの決断をすることが大切です。
■ 洗面所の造り方によって、洗面や歯磨きはもちろん、入浴前後の快適さ、家事のしやすさが変わります。使い勝手の良い洗面所に必要な間取りや広さ、収納、さらにおしゃれな洗面所にするポイントなどについて考えていきましょう。
コラム 注文住宅の洗面所のつくりかた・間取り・広さ・収納はどうする?