住宅を新築した人の中には、以前に住んでいたマンションと比較して一戸建ては寒いと感じるという話を聞くことがあります。築30年、40年という住宅では珍しくありませんが、近年は住宅の省エネ化が進んでいます。
それでも寒い家が建ってしまう原因は、断熱材の厚みや種類によるものなのでしょうか?断熱性の高い家とはどのような家なのでしょうか?
浜松市での住宅の温熱環境への考え方
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浜松市は春から秋にかけては温暖な気候が続き、四季の移り変わりがはっきりしているので、季節ごとに庭の草花や空気の匂いの変化を楽しめます。ただ、冬は北西の強い季節風が吹くため、気温以上に寒く感じられます。
冬は暖かく過ごせ、春から秋にかけての温暖な気候が続く季節には、できるだけ冷暖房機器を使わずに過ごせる時間帯や、期間を伸ばせる断熱性や気密性が高く、日射遮蔽ができる家が求められます。
同時に、省エネ性という観点から考えると冷房や暖房が必要な季節には、最小限のエネルギーで最大の効果を上げられる家にしておくことも大切です。
遠州のからっ風が吹く浜松市で、一戸建ては寒いと言わせない断熱性の高い家、省エネ性の高い家にする為に必要なことについて考えていきましょう。
住宅に断熱性を持たせる工法の種類
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住宅に断熱性を持たせるということは、住宅への熱の出入りを抑えるということです。その為、新築時には住宅の外気と接する部分に断熱材を使って住宅に断熱性を持たせます。住宅に断熱材を使う方法には充填断熱、又は外張断熱という2つの断熱工法があります。
木造住宅では充填断熱が採用されることが多いのですが、施工性やコストを考え併せた上で、施工する個所に合わせて2つの工法を組み合わせることもあります。
充填断熱工法
壁の内側で柱の間に断熱材を充填する工法です。外張り断熱よりコストを抑えられる良さがありますが、内部結露を発生させるリスクもあります。内部結露を起こす恐れのない充填断熱をする為には、通気や防湿に十分な配慮がされた設計と施工が必要です。
床下断熱
床の下に断熱材を敷き詰める床の断熱方法です。床下の通気が良いのでシロアリ被害のリスクは低いのですが、冬は床下から冷気が上がってきます。
外張断熱工法
屋根や壁、基礎の外側に断熱材を貼り付ける工法です。鉄筋コンクリートに採用されることが多いのですが、木造住宅にも採用されます。外側に断熱材を貼り付ける為、充填断熱と比較するとコストは上がりますが、結露が発生する→木材が腐朽する→耐震性が低下するという心配がありません。
また、壁の中に空間ができるので、配線や配管に活用できるという良さがあります。ただ、その一方、断熱材を厚くしすぎると断熱材の重みで外壁が下がったり、地震の際に断熱材が変形したりする恐れがあります。
基礎断熱
基礎の立ち上がり部分のコンクリートを断熱材で覆う断熱方法で、床下の温度と室温の差が抑えられるので、住宅全体の温熱環境が向上します。
基礎断熱には、外側を覆う基礎外断熱と内側を覆う基礎内断熱があります。基礎外断熱には、断熱材によってシロアリを呼び寄せてしまうリスクがある為、近年は基礎内断熱が多く採用されるようになってきています。
また、全館空調や床下エアコンなど、床下断熱が向かない空調設備にする場合には、基礎断熱にする必要があります。
優れた断熱材の種類
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断熱材には非常に多くの種類があり、その選び方によって様々な影響が出ます。断熱効果の高さだけではなく、重みで壁に負担を与えないことや室内の空気環境に悪影響を与えないことも断熱材選びには大切な要素です。
フェノバボード
発泡プラスチック系断熱材ですが、硬質ウレタンフォームなどの他の発泡プラスチック系断熱材と比較すると、薄くても高い断熱効果があり、経年変化も少ない優れた断熱材であると共に、環境にも身体にも影響が少ないF☆☆☆☆等級という安心感があります。
フェノバボードは内断熱にも外張り断熱にも採用されます。
アクリア
他の断熱材に比べてコストパフォーマンスが優れているガラス系断熱材です。一般的なグラスウールと比較すると細いガラス繊維が高密度で絡み合わせてあるため、気密性が高くより高い断熱効果を上げます。ノン・ホルムアルデヒドで発がん性のリスクも認められていない安心感があります。
サーモウール
化学的な合成素材とは違い、天然素材である羊毛を使った断熱材です。調湿力の高さが壁内結露や断熱性能の劣化を防ぎます。
化学系接着剤などの有害物質が一切使用されていない安心感があります。
カネライトフォーム
押し出し法ポリスチレンフォームの断熱材で、気泡が熱をさえぎり結露を抑制します。吸水・吸湿性がほとんどない為、断熱性能の劣化が抑えられています。ホルムアルデヒドも含まれていない安心感があります。
住宅の断熱性に大きく影響する窓
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断熱性という面から考えると、住宅への熱の出入りする量が最も多い場所は窓です。その為、窓の断熱性と気密性を上げることが、室温に直接影響します。
開口部の断熱
画像出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネ住宅
屋根や壁、床の断熱も大切ですが、住宅の温熱環境に大きく影響する部分が窓です。特に浜松市では日照時間が長いので、より室温への影響があります。
浜松市は全国的にみて日照時間※が長いことが確認されています。気象庁発表の「全国気候表2011年」(全国153に上る各地点の気象データを公表しているもの)では、浜松市の日照時間は2386.2時間で日本一となり、その後の公表でも年間日照時間は全国トップクラスです。
※日照時間とは、直射日光が実際地上を照らす日射量が120W/平方メートル以上の時間。
引用:浜松市役所企画調整部広聴広報課 自然
浜松市は日照時間が長い分、冬は暖かさを採り入れられる時間が長い一方、夏は室温が上昇する時間も伸びてしまいます。その為、窓に断熱性能を持たせることが大切です。
ガラスとサッシの素材
窓の断熱性能はガラスとサッシの素材によって、室内への陽射しの量は窓の位置によって変わります。
最も断熱性の高い窓は樹脂サッシとトリプルガラスの窓です。北海道などの極寒の地域ではこの窓が使われます。浜松市では北海道ほどの断熱性能は必要ありませんが、樹脂サッシとLow-E複層ガラスの窓が理想的です。
特に強く陽射しが入る方角に向いている窓には遮熱タイプを採用すると、夏の室温上昇も抑えられます。断熱性が低い窓には冬になると結露が発生しますが、浜松市で樹脂サッシ+Low-E複層ガラスの窓にしておけば、結露の心配もありません。
断熱性の高さを活かす設計
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屋根、壁、窓、基礎の全てに持たせた断熱材や窓の機能による断熱性は、設計によってより活かされます。
間取りと空調
住宅の外気と接する部分からの熱の出入りを抑えた断熱性の高い住宅では、全館空調を採用することで、暖かさ涼しさを家中に届けられます。吹き抜けや通り土間、格子など、家の中の空気が循環しやすい間取りになっていると、効率よく家中に快適な空気が届きます。
深い軒や庇
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軒や庇があると、窓の外で日射遮蔽ができます。窓の断熱・遮熱性能と組み合わせることで効率よく夏の室温上昇を抑えられます。
新築時に住宅の断熱性能について考える時、家の向いている方角や敷地周辺の環境による日当たりの状態と同時に、地域の気候に合わせて計画を進めることが大切です。
断熱性能は高めれば高めるほど費用が嵩みます。数字だけにこだわって北海道で求められるような断熱性能を持たせるより、浜松市の気候に合った断熱性能を持たせることが大切です。
田畑工事が建築する住宅は、令和4年10月以降は断熱等級5(ZEH水準)で施工しています。
また、断熱材の選び方によっては、家の中の空気環境に良くない影響が生まれてしまう恐れもあります。
新築する家にはどのような断熱方法が良いのか、どの程度の断熱性能を持たせるべきなのか…とお悩みの時には、お気軽にご相談ください。
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という創業以来の想いを基に、家づくりをしています。
自然素材で建てられた家、一世代だけで終わる家ではなく、子や孫の代まで、心地よく暮らせる家、家族それぞれのライフスタイルに寄り添った家をお考えであれば、ぜひ田畑工事のモデルハウス見学や家づくり相談においでください。