狭小地に家を建てる場合、周辺の環境や、敷地の形状によっては、1階に十分な日当たりを確保できない家になってしまうことがあります。
特に、間口が狭く、奥行きが長い、いわゆるウナギの寝床とも呼ばれる狭小地の場合、1階の中心部分にまで陽射しが届かない部屋ができてしまうケースも少なくありません。
ウナギの寝床は、旗竿地に次いで、狭小地の中に多い形状です。
日当たり以外にも、隣家や道路との位置関係によっては、外部からの視線が気になる部屋になってしまう恐れがあります。
せっかくリビングに繋がるウッドデッキを設けたのに、隣家や通りからの視線が気になり、ウッドデッキに出られない、それどころか、リビングの窓にはブラインドを降ろしたまま…というような生活になりかねません。
掃き出し窓があり、日当たりも景観も良いリビングにしたいという想いは、誰もが持つ理想のリビング像です。
そこでご提案したい間取りが、2階リビングです。
近年、家にいる時間はほとんどリビングで過ごすというライフスタイルのご家族が増えています。
そのようなライフスタイルのご家族にとって、リビングの居心地の良さは、暮らしやすい家にするためには、なくてはならない条件です。
狭小地で2階リビングにすると得られる暮らしの快適さ
狭小地に建つ家を暮らしやすくする2階リビングには、どのような良さがあるのでしょうか?
明るい
2階にリビングを計画することによって、十分な陽射しを採り入れられる明るいリビング、外部からの視線を気にせず、寛げるリビングを実現できます。
視線を気にせず寛げる
隣家との距離が近い場合には、トップライトやハイサイドライトを採り入れるなどの方法で、視線を気にせず、陽射しを採り入れることができます。
空と繋がるアウトドアリビングを楽しめる
リビングの掃き出し窓に繋がるバルコニーには、ルーバーなどの目隠しを設け、鉢植えのグリーンを配置するなどの工夫で、心地よい空間が生まれます。
外部からの視線は遮り、空を感じながら、アウトドアリビングを楽しめます。
ただ、夏には、非常に暑くなるので、断熱・遮熱効果のあるサンシェードなどが必要です。
勾配天井で開放的な空間が生まれる
勾配天井によって、縦に広がる空間が生まれ、リビングの上に広いロフトが造れます。
リビングと空間が繋がっているロフトは、子供を遊ばせるスペース、お父さんの書斎、お母さんの趣味の部屋など、様々な活用方法があります。
地震に対する安心感が増す
2階リビングの場合、1階は家族それぞれの居室になるため、壁と柱が増えます。その結果、1階に広いリビング空間がある家に比べて、建物のバランスが安定しやすくなります。
2階リビングと家事の関わり
2階建て住宅では、毎日の家事の中で、洗濯物に関わる家事は、階段の昇り降りを伴うので、大きな負担です。
でも、2階リビングにする場合、キッチンや浴室、洗面所などの水回りも、一緒に2階に設ける計画にすると、階段の移動が洗濯物に関わる家事からなくなります。
子育て中は、洗濯物の量が多く、日に数回洗濯機を回すこともあるご家庭では、かなり家事が楽になります。
その一方、2階にキッチンがある場合には、食料品を2階まで運び込まなくてはならないという面もあります。
育ち盛りの子供がいるご家庭では、食料品の量も多いので、重い食料品を2階に運ぶのは大変です。
解決策として、玄関と階段の間に食料品の仮置きができる収納スペースを設けるという方法があります。
1階リビングの場合、帰宅した家族が、玄関から直接リビングに行くため、リビングに物が溢れやすくなってしまいます。
それを防ぐ為、玄関に家族で使える大型収納を設けるという方法があります。
2階リビングの場合には、帰宅した家族は、自分の部屋に、外出時に使ったバッグやコートを収めてから2階に上がるので、その心配はありません。
その為、大型の収納は必要ありませんが、ケースのペットボトルや、お米など、一度に運ぶ必要のない重い物を仮置きできるスペースがあると便利です。
また、1階にキッチンがある場合、勝手口があり、勝手口の周辺に、雨の日に洗濯物を干すスペースやごみの仮置き場として活用できるストックヤードを設けられます。
2階にキッチンがある場合、キッチン専用のバルコニーを設けると、ストックヤードに代わるスペースとして活用できます。
2階リビングの家をより暮らしやすくする工夫
暮らしの快適さを得られる2階リビングですが、暮らし始めてみると、1階にリビングがあった暮らしの時からは、想像できなかったようなことが起こります。
家づくりの段階で、2階リビングで暮らした際に起こることを把握し、対策を考えておくことが大切です。
家族のコミュニケーション
1階リビングの場合、帰宅した家族は、リビングに直行する、という生活スタイルが多くみられます。
この生活スタイルは、リビングに物が溢れやすくなるという難点はありますが、子供の行動を把握しやすいという良い点があります。
2階リビングの場合、帰宅した子供が、自分の部屋に荷物や上着を片付けに行くのは良いのですが、そのまま、部屋にこもってしまうと、家族のコミュニケーションが希薄になってしまいます。
2階にいても、家族が帰宅した際には、帰宅したことがわかるような工夫が必要です。
荷物を置いたら、自分の部屋でしたいことがあっても、いったん2階に上がり、ただいまの挨拶をする習慣をつける、
子供がリビングで宿題や読書ができるよう、勉強コーナーを作っておく、
大人が家にいる時間帯に帰宅することがわかっている場合には、子供には鍵を持たせないなど、暮らし方に合った方法を見つけることが大切です。
階段
二階リビングの家では、一般的な2階建て住宅より、階段の昇り降りが多くなります。
重い食料品を運ぶことなども考え合わせると、階段の勾配を緩くする、玄関の近くに設けるなどの工夫が必要です。
暑さ
2階リビングは、冬も暖かく過ごしやすいという良さがある一方、夏の暑さが厳しいという面もあります。
軒を長くする、遮熱機能のある窓を選ぶ、住宅、特に屋根の断熱性を上げるなどの対策が必要です。
排水音
2階に水回りがあり、1階に家族の寝室がある2階リビングの家では、排水音が家族の睡眠を妨げる恐れがあります。
家族の生活の時間帯がほぼ同じで、夕食は揃って摂るというような場合には、ほとんど問題になりません。
しかし、仕事の都合で帰宅が遅い家族がいる場合には、食事の支度や入浴などの排水音が、階下に部屋に響いてしまいます。
排水音に煩わされない場所に、早く就寝する家族の寝室を配置するなど、間取りの工夫が求められます。
防犯
侵入強盗は、空き巣だけではありません。
居空きという犯罪もあります。
家族が在宅しているのに、侵入して強盗を働く手口です。
2階リビングの場合、1階の気配を感じにくいので、この犯罪の被害にあうリスクが高まります。
2階リビングの家の防犯性を高めるためには、窓の防犯が大切です。
最近の玄関ドアは防犯機能が高いこと、また、玄関ドアからの居空き強盗の侵入は少ないことから、防犯合わせガラスなどで、窓の防犯を強化することが大切なのです。
将来のこと
家は長く住む場所です。
家を建てた時には、想像しにくいことですが、誰もが高齢になっていきます。
子供が独立していき、家を建てたご夫婦は仕事からリタイアする日、さらに80代になって、階段の昇り降りが億劫になる日もやってくるでしょう。
重い荷物を2階まで運ぶ、配達の人が来るたびに1階まで下りるなどが、生活の負担になるような日々です。
家づくりの計画時には、その日に備えることも、忘れてはならない要素です。
1階だけで暮らせる間取りにリフォームできるよう計画しておく、または、将来的にエレベーターを設置できるようにしておくなどの対策で、高齢になった時に備えられます。