国内の注文住宅の住宅面積と土地付注文住宅は、年々縮小している傾向があります。
注文住宅の平均的な床面積は、2014年を境に6年連続、土地付注文住宅の床面積は2年連続で縮小しています。
2020年度に発表されたフラット35の利用差調査の結果では、2019年度の注文住宅の床面積は、全国平均125.8㎡、土地付注文住宅の床面積は、全国平均111.5㎡でした。
その為、2階建て住宅と比較すると、広い敷地面積が求められる平屋は、近年の国勢調査では、木造の戸建て注文住宅のうち、およそ一割程度しか、建築されていませんでした。
土地の価格が高額な地域では、予算内で購入できる土地に対して、二階建てにすれば、2倍の床面積を得ることができ、ゆったりした居住面積を確保できるからです。
木の香る子育て住宅(2階建て住宅) 浜松市南区 Y様邸
また、住宅が密集している地域では、2階建ての方が、日当たりや風通しを確保しやすいということもあるでしょう。
一方、平屋住宅の暮らしやすさに魅力を感じ、新築するなら平屋にしたいという人も増えてきています。
なぜ今、平屋に魅力を感じる人が増えているのでしょうか?
敷地に限りがあっても、平屋を建てたい場合に、必要な工夫はあるのでしょうか?
平屋と二階建てのそれぞれの特徴
平屋の住みたいと考える人が感じている平屋の暮らしやすさについて考えてみましょう。
多くの人が平屋の良さとして挙げる要素は、階段のない暮らしです。
家は長く住むこところです。
子育ての時期から、高齢になるまで、住み続けるご家族がほとんどだと思います。
その長い期間には、子供の成長に合わせ、暮らしは常に変わり続けます。
そして、子供の独立、家を建てたご夫婦の現役からのリタイア、高齢化など、何度かの大きなライフステージの変化も起こります。
階段のない家は、その長い期間を通じて、常に暮らしやすさを維持できる家です。
子供の独立後、結婚した子供夫婦と一緒に暮らす場合には、平屋より、2階建ての方が、それぞれの世帯のプライバシーが守りやすいという考え方があります。
反対に、平屋の二世帯住宅には、三世代の暖かい触れ合いがあり、バリアフリーの家にできるという考え方もあります。
一方、子供が独立し、夫婦だけの暮らしを続けるうちに、高齢になった際には、階段の昇り降りが面倒になり、2階は使わなくなってしまうというようなこともあります。
居住面積の面から考えて、2階建て住宅を選択する場合には、将来的に減築可能な設計にしておくという選択肢もあります。
安全性
まだ、一人で外出できないような小さな子供や、外出の機会が減る高齢者にとって、外での事故に比べて、家の中での事故が多く発生します。
そして、家の中での事故の発生率が高い場所は、浴室と階段です。
高齢者の浴室での事故は、温度差により発生する身体的なダメージが原因であることがほとんどですので、物理的な事故では、階段が最も事故発生率の高い場所と考えられます。
階段の形状にもよりますが、直階段からの転落などは、命にかかわるような大事故にも繋がります。
ハイハイするようになった子供が、洗濯物を干すために2階に行った母親の後追いをして、転落してしまうこともあれば、高齢者が足を滑らせて転倒することもあります。
階段のない暮らしでは、このような事故の心配がありません。
二階建ての家では、直階段やかね折れ階段は避け、折り返し階段にすると、階段の安全性を高められます。
折り返し階段で、踊り場を広くとると、床面積は圧迫されてしまいますが、安全性の高い階段になるとともに、踊り場を家族の図書コーナーなどとして活用することもできます。
子育てのしやすさ
支えあって楽しく仲良く。平屋の二世帯住宅 磐田市S様邸
階段のない平屋は、子供の見守りがしやすい、家族の気配を感じとれるという良さがあります。
就学までの子供は、常に見守らなくてはなりませんが、1階だけで家事が完結する平屋では、家事をしながらの見守りができます。
庭で遊ぶ子供にも目が届き、子供が学校に行くようになれば、外出と、帰宅時の声掛けがしやすいという良さがあります。
プライベートな時間を大事にするような年頃になっても、平屋は自然な触れ合いのチャンスが多いので、子供の行動を把握できます。
二階建てにする場合は、対面式にキッチンを採用し、リビングとダイニングキッチンを直線上に並べ、キッチンでの家事をしている時でも、子供を見守れるような間取りにする、階段の上と下にチャイルドゲートを設けるなどの工夫が必要です。
家事動線
水回りを1階に設ける二階建てで、2階のベランダに洗濯物を干す場合、洗濯する、洗濯物を干す、取り込む、アイロンがけをする、収納するという流れの中に、階段の昇り降りが複数回含まれます。
特に子育て中で洗濯物が多い場合には、何度も往復しなくてはなりません。
朝、お弁当を作ったり、朝食の支度をしたりしながら、洗濯機を回し、子供を起こしに行くなど、朝はとても忙しい時間帯ですが、階段の昇り降りが省かれるので、家事負担が減ります。
2階建てにする場合には、水回りと階段の位置関係に配慮し、キッチン、リビング、洗濯機を設置してある洗面所、階段が回遊できるようにしておくことで、家事負担を減らせます。
平屋の問題点
平屋には良い面がたくさんありますが、暮らしにくさを生む要素もあります。
それは、敷地の面積と周辺の環境が、二階建ての家に比べて、暮らしに大きな影響を与える点です。
敷地の面積
同じ敷地の広さであれば、二階建ての半分以下の床面積しか得られません。
その為、平屋では、限られた床面積を活用する工夫をする必要があります。
ロフトを作る
支えあって楽しく仲良く。平屋の二世帯住宅 磐田市S様邸
天井を取り払い、屋根裏部分を利用するロフトは、平屋にプラスαの空間を造り、収納や、子供の勉強コーナー、書斎として活用できます。
ロフトを作る際には、収納式階段や、梯子ではなく、固定階段にすることで、安全に使えるロフトにすることができます。
収納をまとめる
デッドスペースを利用して細かな収納をたくさん作るという方法は、あまり効率の良い方法ではありません。
たくさんの収納を作っても、家族の動線にあっていない、収める物のサイズに合っていないというような使い勝手の悪い収納であれば、使われない収納になってしまうからです。
それよりも、大型で内部を収納するものに合わせて自由に変えられる収納を作ることで、床面積の倹約+活きた収納にできます。
周辺の環境
敷地自体が狭くても、周辺が開けた環境であれば、暮らしやすい平屋にできます。
反対に、ある程度の敷地面積が確保できていても、周辺に住宅やマンションが密集していれば、日当たり、風通しが悪い家になってしまう恐れがあります。
そのような場合には、設計の工夫が求められます。
日当たりと風通し、外部からの視線
2階建ての場合、密集した住宅地であっても、吹き抜けを設けて、2階からの陽射しを、1階まで届けられます。
一方、平屋の場合、隣家が迫っている、マンションが近くにある、というような環境であれば、日当たりと風通しが悪くなってしまいます。
また隣家や道路からの視線が、気になる窓が増えてしまうこともあります。
そのような場合には、トップライトやハイサイドライトを採用することで、陽射しを採りこみつつ、外部からの視線を遮ることができます。
勾配天井と組み合わせたトップライトのあるリビングは、開放感のある雰囲気が生まれるので、視覚的にも良い効果を生み出します。
また、トップライトやハイサイドライトは高い位置にあるので、通常の位置にある窓との高低差が生まれ、風通しも良くなります。
水害
過去に水害があった地域に平屋を建てることは、大きなリスクを伴います。
平屋を建てることを前提に、土地を探す場合には、過去の水害などについて、調査することが大切です。
■ ■ ■
平屋であっても、2階建てであっても、家族構成と家族の暮らし方、家族の将来、そして敷地の広さと敷地を取り巻く環境にあっている家であることが、暮らしやすい家の基本です。
平屋にも2階建てにもそれぞれ暮らしやすい部分と、暮らしにくさを感じる部分があります。
大切なことは、家族の暮らし方と周辺の環境を、十分に考慮することです。
その上で、平屋と二階建てのどちらを選ぶかを決めていくと良いのではないでしょうか?
浜松で家族の暮らしに寄り添った自然素材の家を造る工務店
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