土間とは?
土間は、靴を履いたまま立ち入れる屋内空間です。日本では、家に上がる際には、靴を脱ぐ習慣があるので、玄関には必ず、靴を脱ぎ履きする為に土間があります。近年は床面積を倹約する為、最小限の面積にする玄関土間が増えていますが、土間に応接セットを置いてちょっとした来客に応対したり、雨の日に屋内で作業をしたりできるような広さの玄関もあります。
また、昔の家では、土間キッチンも多くありました。キッチンは火を使う場所なので、土や三和土で作られた土間は、火が出ても、燃え広がりにくいということと、腐る心配のない土や三和土なら、野菜くずなどを落としても、水で洗い流せるという便利さがあったからでしょう。農家では、屋内でする作業場としても使われていました。
町家と言われる京都の民家には、玄関と勝手口を結ぶ通り土間があります。ウナギの寝床のように間口が狭く、奥行きが長い敷地に建つ家で、効率よく家事ができるように工夫された間取りです。
現代の家に設ける土間の造り方
もし、新しい家に土間があったら、どのように使いたいですか?家族の暮らしにあった土間にする為、土間の用途について考えてみましょう。
玄関土間…玄関を広々と使いたい
玄関の面積の余裕があると、玄関はとても使いやすい空間になります。
収納 玄関の一部に土間収納を設けると、靴以外に、コートや傘、スポーツ用品、ベビーカー、掃除用品、ガーデニングの道具などをたっぷり収納できます。ウォークスルークローゼットのような造りにし、来客動線と分けておくと、玄関内がすっきりし、リビングに物が溢れなくなります。
身支度 土間収納の内部に鏡を設置しておくと、お出かけの身支度もできます。また、雨の日には、土間が広いと、レインコートを羽織ったまま、屋内に入れます。
作業 室内では汚れが気になる作業ができます。
来客の応対 ベンチや小さなテーブル、植物の鉢などを置いて、ちょっとしたカフェのような空間にもできます。家に上がってもらうほどの用事ではないお客様の応対ができます。来客側も、靴を履いたままなので、気軽に立ち寄れます。
リビングと庭を繋ぐ土間…庭と融合する家にしたい
ウッドデッキを設けて庭とリビングを融合させるという方法もありますが、土間を設けて、庭とリビングを癒合させるという考え方もあります。リビングと土間の間に掃き出し窓を設ける間取りと、リビング全体を土間にする間取りがあります。
リビングと庭の間に土間を設ける間取りは、土間が外気温と室内の温度の緩衝地帯としても役割も果たします。
子供やペットが出入りしやすい 子供が庭で泥遊びをした後や、犬の散歩の後、土間があれば、土足のまま土間まで入り、泥汚れを落とせます。
泥付き野菜を持ち込める 家庭菜園で収穫した野菜をキッチンに運ぶ際、いったん土間に仮置きできるので、リビングに泥汚れが落ちる心配がありません。
薪ストーブが置ける リビング全体を土間にする間取りでは、薪ストーブを設けても、床の汚れを心配する必要がありません。
キッチンの土間…家事効率を上げる土間
掃除がしやすい 調理中に床の汚れがきれいに洗い流せます。
食料品が運び込みやすい 勝手口がなくても、玄関からの土間がキッチンまで繋がっていれば、食料品を楽に運び込めます。
ダイニングキッチン土間…庭と繋がる土間
アウトドアダイニングの気分が味わえる 春から秋にかけての気候の良い時期には、掃き出し窓をすべて解放すると、庭で食事をしているような楽しさがあります。
子供の食べこぼしが気にならない まだ小さな子供が、食べこぼしたり、飲み物を倒したりしてしまっても、手軽に掃除ができます。
勝手口の土間…家事効率を上げる
ごみの仮置きができる キッチン勝手口に広い土間がついていると、プラごみや新聞紙などの仮置きができます。
洗濯物が干せる 洗面所勝手口に広い土間があると、雨の日や、花粉の多い季節にも、洗濯物を干せます。
土間のある家を計画する際の注意点
土間にはたくさんの良さがある一方、造り方によっては、寒い、ジメジメする、滑りやすい、踏み外しやすいなどの問題点が起きてしまいます。家全体の環境に悪影響を与えない土間にする為の注意点にはどのようなことがあるのでしょうか?
広い土間があっても冷えない家にするためには断熱が必要
土間は、夏は涼しくて気持ち良いのですが、冬は冷えて、隣接する部屋まで暖房が効きにくくなってしまうことがあります。リビングと庭の間の土間は、断熱性が高ければ、冷えた外気との緩衝地帯になりますが、十分な断熱性がなければ、間にある掃き出し窓を閉めていても、リビングを冷やしてしまいます。
ジメジメしない土間にするためには換気が必要
土間、特に玄関土間と土間収納は、湿度が高くなりやすいので、風通しを良くしておくことが大切です。リビングやダイニングの土間は、掃き出し窓と組み合わせることが多いので、問題ありません。しかし、窓を設けられない場合には、換気扇をつけるなど、適切な換気計画をしなくてはなりません。
加えて、壁や天井には、調湿性のある自然素材を使うことも効果的です。木材、漆喰や珪藻土などの塗り壁は、湿度が高くなってくると、空気中の水分を吸収し、ジメジメしないようにする働きをしてくれます。
滑らない安全な土間にする為には建材選びが大切
モルタル、コンクリートは、水に濡れても滑りにくい素材です。モルタルに石や砂利を混ぜた洗い出しは、細かい砂利が混ぜられているタイプは滑りにくく、石が大きいタイプは滑りやすいという特徴があります。
タイルはカラーバリエーションや質感が豊富なので、リビングや、ダイニングキッチン全体を土間にする場合には、インテリア性を向上させます。ただ、タイルの中には、滑りやすいタイルもあるので、滑り止め加工がしてあるタイルを選びましょう。
段差の高さの決め方
土間は、靴についた泥などが、室内に入らないよう、室内の床より、低く造られています。この段差の高さが、通行の負担にならないようにと考えると、低めに造った方が良いように思われます。ただ、低すぎると、かえって躓きやすくなる恐れがあります。また、ある程度の高さがあった方が、子供を腰掛けさせて靴を履かせる、ブーツを脱ぐというような場合には、ある程度の高さがあった方が便利な場合もあります。
150~170mmの間という高さが一般的ですが、それより低く造る場合は、腰かけられる部分を造る、それより高くする場合は、式台を設けるなど、小さな子供がいる、高齢者がいるなど、家族の事情にあった使いやすさに配慮して、高さを決めましょう。